2020.08.15 Saturday
イスラエルとUAE 国交正常化へ「歴史的な外交上成果」と強調
アメリカのホワイトハウスは、イスラエルとUAE(アラブ首長国連邦)と共同で声明を発表し、イスラエルとUAEが国交を正常化することで合意したと発表しました。
イスラエルが歴史的に対立してきたアラブ諸国と国交を結ぶことになり、声明は「歴史的な外交上の成果」だと強調しています。
◇米ホワイトハウス 共同で声明発表
ホワイトハウスは13日、イスラエルとUAEと共同で声明を発表し、イスラエルとUAEが国交を正常化することで合意したと発表しました。
数週間以内に投資や安全保障、それに大使館の設置など、さまざまな分野で2国間の合意に調印するとしています。
◇ユダヤ人入植地の併合 一時停止も
また、合意を踏まえてイスラエルが検討していたヨルダン川西岸の一部のユダヤ人入植地の併合を一時停止するとしています。
イスラエルは1948年の建国以来、アラブ諸国と対立関係にあり、これまで、隣国のエジプトとヨルダンを除いて国交がありませんでした。
ただ最近は、地域で影響力を増すイランへの対抗という共通の利益のもと、イスラエルとUAEの関係が接近していました。
声明は、「歴史的な外交上の成果」だと強調していて、今回の合意がイスラエルとアラブ諸国全体の関係に変化を及ぼす可能性もあります。
ホワイトハウスで記者会見したトランプ大統領は、「合意はより平和で安全な中東への大きな一歩だ。氷がとけ始めたことでほかのアラブ諸国やイスラム教の国がイスラエルと国交を正常化することを期待する」と述べ、中東の緊張緩和につながることに期待を示しました。
トランプ大統領は、今回の合意がアメリカの仲介で実現したことを強調していて、秋の大統領選挙を前に外交成果をアピールするねらいもあるとみられます。
◇調印式はホワイトハウスで
また、トランプ大統領は「数週間のうちにホワイトハウスで調印式が行われるだろう」と述べ、イスラエルとUAEの双方の代表をホワイトハウスに招き、今回の合意についての調印式を行う考えを示しました。
◇イスラエル ネタニヤフ首相「新たな平和の時代を迎えた」
イスラエルのネタニヤフ首相は、エルサレムで記者会見し、「イスラエルとアラブ世界は新たな平和の時代を迎えた」と述べました。
そして、「エジプトとヨルダンに続き、3つ目の平和条約になる。アラブ諸国にとってさらに平和の輪を広げるチャンスだ」と述べ、ほかのアラブ諸国とのさらなる関係改善に期待を示しました。
一方、ネタニヤフ首相は、トランプ政権が発表した和平案に基づいて、パレスチナ暫定自治区のうち、ユダヤ人入植地を含むヨルダン川西岸の30%の土地をイスラエルに併合する考えを示していましたが、今回の合意では、これを一時停止するとしています。
これについて、会見で問われたネタニヤフ首相は、「トランプ大統領から一時停止するよう求められた」としつつ、「併合はまだテーブルの上にある」とも述べ、併合の考えを完全に取り下げたわけではないと強調しました。
◇UAE 皇太子 パレスチナ問題で成果と強調
イスラエルとの交渉についてUAEの国営通信は13日、「UAEとイスラエルが国交を正常化することで合意した」と速報で伝えました。
また、UAEとイスラエルの代表団が今後数週間以内に会談し、直行便の運航や大使館の設置などで合意するとしています。
また、UAEのムハンマド・アブダビ皇太子はツイッターで、「イスラエルがパレスチナの併合を停止することでも合意した」と投稿し、アラブ諸国とイスラエルとの間で最大の懸案となってきたパレスチナ問題で成果があったと強調しました。
◇エジプト シシ大統領「入植停止に関心」
1979年にアラブ諸国としては初めて、イスラエルと国交を樹立したエジプトのシシ大統領は、ツイッターに、「パレスチナの領土へのイスラエルの入植を停止するという合意に関する3か国の声明に関心を寄せている。地域の繁栄と安定を成し遂げるため、この合意を実現した国々の努力を評価する」と書き込み、合意を歓迎しました。
◇イラン通信社「恥ずべき合意だ」
イスラエルとUAEの国交正常化合意についてイラン政府は、まだ公式な反応を示していませんが、主要な通信社のタスニム通信は、「恥ずべき合意だ」と批判的に伝えています。
イランは、イスラエルを国家として認めておらず、中東地域の武装勢力への支援などを通じてイスラエルと敵対しています。
一方のアラブ諸国との間では同じイスラム教の国家として一定の関係を維持してきましたが、アラブ諸国で中心的な役割を担うサウジアラビアとの間では、4年前、国交を断絶するなど関係が悪化しています。
イランに厳しいアメリカのトランプ政権が、同盟国のイスラエルとともに「イラン包囲網」とも呼べる状態をつくる中でイランとしては、イスラエルとの関係改善が進むアラブ諸国がこうした包囲網に加わり、地域での孤立化が進むことに警戒感を強めているものとみられます。
◇パレスチナ「強く拒否する」
パレスチナ暫定自治政府は、今回の合意について、「強く拒否する。UAEを含め、第三者がパレスチナ人を代表して口を出す権利はない。われわれは、アラブ諸国やイスラム諸国に対し、緊急の会合を求めたい」とした声明を発表しました。
また、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの報道官は、「この合意は、少しもパレスチナの目標に貢献するものではなく、むしろイスラエルの立場に貢献するものだ。占領を続けさせ、パレスチナの人々の権利を否定し、人々への犯罪も続くことになる」と述べ激しく反発しました。
そのうえで、「必要なのは、占領に抵抗する人々の正当な闘争を支援することであって、占領者との間で合意を結ぶことではない。入植地問題については、イスラエルとの関係の正常化によってではなくアラブ諸国と国際社会に支持されたあらゆる形での抵抗で立ち向かっている」と主張しました。
◇交渉経緯とアメリカのねらい
今回の合意に至った経緯について、交渉を中心になってまとめたトランプ大統領の娘婿でもあるクシュナー上級顧問が記者会見しました。
この中でクシュナー上級顧問は、「交渉はおよそ1年半前から行われ、われわれが中東和平案を示して以降、本格化していった」と述べ、ことし1月にトランプ政権がイスラエルとパレスチナの紛争を解決するためとして中東和平案を公表したあとに交渉が加速したことを明らかにしました。
そして、1週間ほど前に大枠での合意にいたり、今月12日になって合意内容が確定したということです。
クシュナー上級顧問は、トランプ政権で中東和平問題を担当していて、対立するイスラエルとパレスチナのこう着状態を、パレスチナを支援するアラブ諸国にも働きかけることで打開させようとしてきました。
また、イスラエルとUAEは近年、地域で影響力を増すイランに対抗するという共通の利益のもと急速に接近していて、クシュナー上級顧問も合意に至った理由の1つとして、「双方にとって戦略的により利益があるからだ」と説明しました。
そして、今回の合意は、「イスラエル対パレスチナを支援するアラブ諸国」という構図を変化させる可能性も秘めたものでトランプ政権としては、中東和平の実現に向けた一歩としてとらえているとしています。
トランプ大統領は、今回、アメリカが仲介役となったことを強調していて大統領選挙を前に、外交成果としてアピールするねらいもあるとみられます。
◇両国の接近の動き 相次いでいた
UAEとイスラエルの間では最近になって、関係改善にむけた動きが出ていました。
2018年10月にUAEで開かれた柔道の国際大会では、イスラエルの選手が優勝した際、国交がないイスラエルの国歌が会場で流され、異例のこととして注目を集めました。
また、イスラエルは、2018年11月にUAEなど湾岸諸国との間を結ぶ鉄道網の建設を提案したほか、2019年4月にはUAEのドバイで開かれる国際博覧会「ドバイ万博」に参加すると表明し、関係構築に向けた働きかけと受け止められました。
UAEは、ペルシャ湾を挟んで向き合う地域大国のイランを安全保障上の脅威としており、イランと敵対するイスラエルと接近したいねらいがあるものとみられます。
一方、アラブ諸国のUAEにとっては、イスラエルが国際法に反した入植活動を行うパレスチナ問題が、国交の正常化に向けた最大の懸案となってきました。
ただ、今回の合意でイスラエルが、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地の併合を一時停止するとしていることから一定の成果を得られたとして合意に応じたものとみられます。
◇イスラエル アラブ 対立の経緯
イスラエルは1948年の建国以来、アラブ諸国と戦争を繰り返し、対立してきました。
1948年には、エジプトやシリアなど周辺の国と戦火を交え、この戦争によって、多くのパレスチナ人が難民となりました。
また、1967年の第3次中東戦争では、ヨルダンから東エルサレムやヨルダン川西岸などを占領し、エルサレムの全域を支配下に置きました。
1973年の第4次中東戦争でも、再びエジプトなどと戦争をすることになりましたが、6年後の1979年にはエジプトと、そして、1994年には東に位置するヨルダンとの間で平和条約を結び、国交を樹立しました。
さらにここ数年は、地域で影響力を増すイランに対抗するという共通の利益のもとで、アラブ諸国との関係の改善を積極的に図っていました。
正式に決定すればイスラエルにとってUAEは、国交を持つ3か国目のアラブ諸国となり、今後、地域大国のサウジアラビアなどそれ以外の国との間でも関係改善が一気に進むのかが次の焦点となります。
◇イスラエル人からは…
イスラエルがUAEと国交の正常化で合意したことについて、エルサレムのイスラエル人からは、さまざまな声が聞かれました。
イスラエル人の男性は、合意で、ヨルダン川西岸の併合が一時停止になったことに触れ、「国交正常化は平和の証で、いかなるアラブの国とも平和になるべきだと思う。併合は、地域で不必要な緊張をもたらすと思うので、イスラエルにとってはよくないと思う」と合意を歓迎していました。
一方で、別のイスラエル人の男性は、「トランプ大統領は、大統領選挙で自分に有利になることをしただけで、合意は、イスラエルにとってよいことではない」と話し、併合が一時停止されることに失望していました。
◇パレスチナ人の間では…
イスラエルがUAEと国交の正常化で合意したことについて、パレスチナ暫定自治区にあるベツレヘムでは、パレスチナ人の間で失望が広がっています。
55歳のパレスチナ人の男性は、「UAEの立場は、アラブの立場と異なっていておかしいと思う。パレスチナ人としてこんなことが起きるとは思っていなかった」と話していました。
また、別のパレスチナ人の男性は、「私たちには2つしか方法がなく、まずはパレスチナ人が一つになること。そして2つ目には、アラブ諸国の支援がなくなり、私たちだけになったとしても、この現実に向き合わなければならないことだ」と話していました。
◇国連事務総長「交渉再開の機会作り出すこと望む」
国連のグテーレス事務総長は、イスラエルが合意を踏まえて、ヨルダン川西岸の一部のユダヤ人入植地の併合を一時停止するとしていることについて、「ヨルダン川西岸の併合はイスラエルとパレスチナの二国家共存の展望とそれに向けた交渉再開の扉を閉ざすものだとして、一貫して停止を呼びかけてきた」と評価しています。
そして、「今回の合意が二国家共存を実現するために、両者が意味のある交渉を再開する機会を作り出すことを望む」として過去の国連決議に基づき、イスラエルとパレスチナが国家として平和共存するための対話が必要だと強調しています。
イスラエルが歴史的に対立してきたアラブ諸国と国交を結ぶことになり、声明は「歴史的な外交上の成果」だと強調しています。
◇米ホワイトハウス 共同で声明発表
ホワイトハウスは13日、イスラエルとUAEと共同で声明を発表し、イスラエルとUAEが国交を正常化することで合意したと発表しました。
数週間以内に投資や安全保障、それに大使館の設置など、さまざまな分野で2国間の合意に調印するとしています。
◇ユダヤ人入植地の併合 一時停止も
また、合意を踏まえてイスラエルが検討していたヨルダン川西岸の一部のユダヤ人入植地の併合を一時停止するとしています。
イスラエルは1948年の建国以来、アラブ諸国と対立関係にあり、これまで、隣国のエジプトとヨルダンを除いて国交がありませんでした。
ただ最近は、地域で影響力を増すイランへの対抗という共通の利益のもと、イスラエルとUAEの関係が接近していました。
声明は、「歴史的な外交上の成果」だと強調していて、今回の合意がイスラエルとアラブ諸国全体の関係に変化を及ぼす可能性もあります。
ホワイトハウスで記者会見したトランプ大統領は、「合意はより平和で安全な中東への大きな一歩だ。氷がとけ始めたことでほかのアラブ諸国やイスラム教の国がイスラエルと国交を正常化することを期待する」と述べ、中東の緊張緩和につながることに期待を示しました。
トランプ大統領は、今回の合意がアメリカの仲介で実現したことを強調していて、秋の大統領選挙を前に外交成果をアピールするねらいもあるとみられます。
◇調印式はホワイトハウスで
また、トランプ大統領は「数週間のうちにホワイトハウスで調印式が行われるだろう」と述べ、イスラエルとUAEの双方の代表をホワイトハウスに招き、今回の合意についての調印式を行う考えを示しました。
◇イスラエル ネタニヤフ首相「新たな平和の時代を迎えた」
イスラエルのネタニヤフ首相は、エルサレムで記者会見し、「イスラエルとアラブ世界は新たな平和の時代を迎えた」と述べました。
そして、「エジプトとヨルダンに続き、3つ目の平和条約になる。アラブ諸国にとってさらに平和の輪を広げるチャンスだ」と述べ、ほかのアラブ諸国とのさらなる関係改善に期待を示しました。
一方、ネタニヤフ首相は、トランプ政権が発表した和平案に基づいて、パレスチナ暫定自治区のうち、ユダヤ人入植地を含むヨルダン川西岸の30%の土地をイスラエルに併合する考えを示していましたが、今回の合意では、これを一時停止するとしています。
これについて、会見で問われたネタニヤフ首相は、「トランプ大統領から一時停止するよう求められた」としつつ、「併合はまだテーブルの上にある」とも述べ、併合の考えを完全に取り下げたわけではないと強調しました。
◇UAE 皇太子 パレスチナ問題で成果と強調
イスラエルとの交渉についてUAEの国営通信は13日、「UAEとイスラエルが国交を正常化することで合意した」と速報で伝えました。
また、UAEとイスラエルの代表団が今後数週間以内に会談し、直行便の運航や大使館の設置などで合意するとしています。
また、UAEのムハンマド・アブダビ皇太子はツイッターで、「イスラエルがパレスチナの併合を停止することでも合意した」と投稿し、アラブ諸国とイスラエルとの間で最大の懸案となってきたパレスチナ問題で成果があったと強調しました。
◇エジプト シシ大統領「入植停止に関心」
1979年にアラブ諸国としては初めて、イスラエルと国交を樹立したエジプトのシシ大統領は、ツイッターに、「パレスチナの領土へのイスラエルの入植を停止するという合意に関する3か国の声明に関心を寄せている。地域の繁栄と安定を成し遂げるため、この合意を実現した国々の努力を評価する」と書き込み、合意を歓迎しました。
◇イラン通信社「恥ずべき合意だ」
イスラエルとUAEの国交正常化合意についてイラン政府は、まだ公式な反応を示していませんが、主要な通信社のタスニム通信は、「恥ずべき合意だ」と批判的に伝えています。
イランは、イスラエルを国家として認めておらず、中東地域の武装勢力への支援などを通じてイスラエルと敵対しています。
一方のアラブ諸国との間では同じイスラム教の国家として一定の関係を維持してきましたが、アラブ諸国で中心的な役割を担うサウジアラビアとの間では、4年前、国交を断絶するなど関係が悪化しています。
イランに厳しいアメリカのトランプ政権が、同盟国のイスラエルとともに「イラン包囲網」とも呼べる状態をつくる中でイランとしては、イスラエルとの関係改善が進むアラブ諸国がこうした包囲網に加わり、地域での孤立化が進むことに警戒感を強めているものとみられます。
◇パレスチナ「強く拒否する」
パレスチナ暫定自治政府は、今回の合意について、「強く拒否する。UAEを含め、第三者がパレスチナ人を代表して口を出す権利はない。われわれは、アラブ諸国やイスラム諸国に対し、緊急の会合を求めたい」とした声明を発表しました。
また、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの報道官は、「この合意は、少しもパレスチナの目標に貢献するものではなく、むしろイスラエルの立場に貢献するものだ。占領を続けさせ、パレスチナの人々の権利を否定し、人々への犯罪も続くことになる」と述べ激しく反発しました。
そのうえで、「必要なのは、占領に抵抗する人々の正当な闘争を支援することであって、占領者との間で合意を結ぶことではない。入植地問題については、イスラエルとの関係の正常化によってではなくアラブ諸国と国際社会に支持されたあらゆる形での抵抗で立ち向かっている」と主張しました。
◇交渉経緯とアメリカのねらい
今回の合意に至った経緯について、交渉を中心になってまとめたトランプ大統領の娘婿でもあるクシュナー上級顧問が記者会見しました。
この中でクシュナー上級顧問は、「交渉はおよそ1年半前から行われ、われわれが中東和平案を示して以降、本格化していった」と述べ、ことし1月にトランプ政権がイスラエルとパレスチナの紛争を解決するためとして中東和平案を公表したあとに交渉が加速したことを明らかにしました。
そして、1週間ほど前に大枠での合意にいたり、今月12日になって合意内容が確定したということです。
クシュナー上級顧問は、トランプ政権で中東和平問題を担当していて、対立するイスラエルとパレスチナのこう着状態を、パレスチナを支援するアラブ諸国にも働きかけることで打開させようとしてきました。
また、イスラエルとUAEは近年、地域で影響力を増すイランに対抗するという共通の利益のもと急速に接近していて、クシュナー上級顧問も合意に至った理由の1つとして、「双方にとって戦略的により利益があるからだ」と説明しました。
そして、今回の合意は、「イスラエル対パレスチナを支援するアラブ諸国」という構図を変化させる可能性も秘めたものでトランプ政権としては、中東和平の実現に向けた一歩としてとらえているとしています。
トランプ大統領は、今回、アメリカが仲介役となったことを強調していて大統領選挙を前に、外交成果としてアピールするねらいもあるとみられます。
◇両国の接近の動き 相次いでいた
UAEとイスラエルの間では最近になって、関係改善にむけた動きが出ていました。
2018年10月にUAEで開かれた柔道の国際大会では、イスラエルの選手が優勝した際、国交がないイスラエルの国歌が会場で流され、異例のこととして注目を集めました。
また、イスラエルは、2018年11月にUAEなど湾岸諸国との間を結ぶ鉄道網の建設を提案したほか、2019年4月にはUAEのドバイで開かれる国際博覧会「ドバイ万博」に参加すると表明し、関係構築に向けた働きかけと受け止められました。
UAEは、ペルシャ湾を挟んで向き合う地域大国のイランを安全保障上の脅威としており、イランと敵対するイスラエルと接近したいねらいがあるものとみられます。
一方、アラブ諸国のUAEにとっては、イスラエルが国際法に反した入植活動を行うパレスチナ問題が、国交の正常化に向けた最大の懸案となってきました。
ただ、今回の合意でイスラエルが、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地の併合を一時停止するとしていることから一定の成果を得られたとして合意に応じたものとみられます。
◇イスラエル アラブ 対立の経緯
イスラエルは1948年の建国以来、アラブ諸国と戦争を繰り返し、対立してきました。
1948年には、エジプトやシリアなど周辺の国と戦火を交え、この戦争によって、多くのパレスチナ人が難民となりました。
また、1967年の第3次中東戦争では、ヨルダンから東エルサレムやヨルダン川西岸などを占領し、エルサレムの全域を支配下に置きました。
1973年の第4次中東戦争でも、再びエジプトなどと戦争をすることになりましたが、6年後の1979年にはエジプトと、そして、1994年には東に位置するヨルダンとの間で平和条約を結び、国交を樹立しました。
さらにここ数年は、地域で影響力を増すイランに対抗するという共通の利益のもとで、アラブ諸国との関係の改善を積極的に図っていました。
正式に決定すればイスラエルにとってUAEは、国交を持つ3か国目のアラブ諸国となり、今後、地域大国のサウジアラビアなどそれ以外の国との間でも関係改善が一気に進むのかが次の焦点となります。
◇イスラエル人からは…
イスラエルがUAEと国交の正常化で合意したことについて、エルサレムのイスラエル人からは、さまざまな声が聞かれました。
イスラエル人の男性は、合意で、ヨルダン川西岸の併合が一時停止になったことに触れ、「国交正常化は平和の証で、いかなるアラブの国とも平和になるべきだと思う。併合は、地域で不必要な緊張をもたらすと思うので、イスラエルにとってはよくないと思う」と合意を歓迎していました。
一方で、別のイスラエル人の男性は、「トランプ大統領は、大統領選挙で自分に有利になることをしただけで、合意は、イスラエルにとってよいことではない」と話し、併合が一時停止されることに失望していました。
◇パレスチナ人の間では…
イスラエルがUAEと国交の正常化で合意したことについて、パレスチナ暫定自治区にあるベツレヘムでは、パレスチナ人の間で失望が広がっています。
55歳のパレスチナ人の男性は、「UAEの立場は、アラブの立場と異なっていておかしいと思う。パレスチナ人としてこんなことが起きるとは思っていなかった」と話していました。
また、別のパレスチナ人の男性は、「私たちには2つしか方法がなく、まずはパレスチナ人が一つになること。そして2つ目には、アラブ諸国の支援がなくなり、私たちだけになったとしても、この現実に向き合わなければならないことだ」と話していました。
◇国連事務総長「交渉再開の機会作り出すこと望む」
国連のグテーレス事務総長は、イスラエルが合意を踏まえて、ヨルダン川西岸の一部のユダヤ人入植地の併合を一時停止するとしていることについて、「ヨルダン川西岸の併合はイスラエルとパレスチナの二国家共存の展望とそれに向けた交渉再開の扉を閉ざすものだとして、一貫して停止を呼びかけてきた」と評価しています。
そして、「今回の合意が二国家共存を実現するために、両者が意味のある交渉を再開する機会を作り出すことを望む」として過去の国連決議に基づき、イスラエルとパレスチナが国家として平和共存するための対話が必要だと強調しています。
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