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河井前法相・案里議員を逮捕 参院選での買収の疑い 東京地検

 河井案里参議院議員の陣営による選挙違反事件で、東京地検特捜部は、夫の河井克行前法務大臣と案里議員が票の取りまとめを依頼した報酬として、地元議員らに現金を配ったとして、公職選挙法違反の買収の疑いで夫妻を逮捕しました。

 保守分裂の激しい選挙戦のさなかに地元議員ら100人近くにおよそ2570万円を配った疑いがあり、一連の事件は法務行政のトップだった前の法務大臣の夫妻が逮捕される前例のない買収事件に発展しました。

 逮捕されたのは、いずれも自民党を離党した前の法務大臣の河井克行容疑者(57)と、妻で参議院議員の河井案里容疑者(46)で、東京地検特捜部などは午後4時半すぎから河井夫妻の議員会館の事務所や議員宿舎を捜索しています。

 特捜部などの調べによりますと、河井前大臣は去年7月の参議院選挙をめぐり、妻の案里議員が立候補を表明した去年3月下旬から8月上旬にかけて、票の取りまとめを依頼した報酬として、地元議員や後援会幹部ら91人に合わせておよそ2400万円を配ったとして公職選挙法違反の買収の疑いが持たれています。

 また、案里議員も河井前大臣と共謀し、5人に対して170万円を配った疑いが持たれています。

 案里議員は去年3月、参議院広島選挙区で自民党本部の支援を受けて党の2人目の候補として擁立され、地元の県連組織が推す当時の現職と保守分裂の激しい選挙戦の末に初当選しました。

 一方、法務副大臣や総理大臣補佐官を歴任した河井前大臣は参議院選挙の後、法務大臣に就任しましたが、去年10月に選挙違反の疑いが週刊誌に報じられ辞任しました。

 検察当局は法務行政のトップだった前法務大臣の夫妻による、地元政界を巻き込んだ前例のない買収事件の全容解明を進めることにしています。

 河井夫妻は17日、自民党を離党しましたが、関係者によりますと、夫妻は違法な行為はしていないなどとして、議員辞職はしない意向を示しているということです。

◇河井前大臣「不正な行為はしていません」
 逮捕された河井克行前法務大臣に18日夜、東京拘置所で接見した弁護士は記者団に対し、河井前大臣が「不正な行為はしていません」と主張していることを明らかにしました。そのうえで、「金銭の授受はあったのか」など記者団からの質問には答えませんでした。

◇自民党本部 地元県連の反発振り切り擁立
 定員2の参議院広島選挙区では、平成16年の参議院選挙以降、自民党と旧民主党系で議席を分け合ってきましたが、去年7月の選挙では自民党が、高い支持率などを背景に、当時の現職だった溝手顕正氏に加えて、2人目の候補として新人の河井案里議員を擁立しました。

 自民党の広島県連は、2人目の擁立は組織が割れて、将来に禍根を残しかねないとして、反対しましたが、党本部は、これを振り切る形で擁立を決定しました。

 これによって地元の県連からは強い反発があがり、溝手氏を応援する地元の県連と案里議員を推す党本部に分かれ、事実上、保守分裂の激しい選挙戦になりました。

 その結果、トップで当選した野党系の候補に次いで、案里議員が2議席目で初当選し、溝手氏は落選しました。

◇元特捜部検事 「買収の原資は徹底的に捜査を」
 元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は、一連の現金提供が案里議員の票の取りまとめを依頼する趣旨だったかどうかを立証できるかが、今後の捜査の焦点になると指摘します。

 この中で高井弁護士は、「議員に現金を渡した名目が統一地方選挙の『陣中見舞い』や『当選祝い』でも実質的に、『妻の選挙をよろしく』という趣旨であれば買収は成立する。例えば今まで『陣中見舞い』や『当選祝い』を渡したことがない相手に今回初めて現金を渡したのであれば、選挙の協力依頼だったと合理的に推認できる。こうした細かい間接事実を積み重ねて立証することが必要だ」と指摘しました。

 また、河井夫妻の自宅から押収された現金の配布先とみられる100人以上の名前と金額が記載されたリストについては、「例えば100人のうち95人が現金の授受や趣旨を認めていれば残りの5人がいくら否認しても『選挙をよろしく』という趣旨で渡されたと推定できる。極めて有力な物証だ」と指摘しました。

 そのうえで、「これまでの捜査で現金の授受を認めている人たちも、裁判で否認にすれば『現金の原資は何か』ということは当然、問題になる。自民党本部から陣営側に振り込まれた1億5000万円が買収資金の原資なのか、ほかから出てきた金なのかという点は捜査の焦点の1つで、原資の捜査は徹底的に行わなければならない」と述べました。

◇公選法に詳しい専門家「一方の候補者に10倍の資金、経緯解明を」
 公職選挙法に詳しい日本大学法学部の岩井奉信教授は、「2000万円を超える額が動いたというのは、これまでの買収事件と比べると非常に規模が大きく、選挙の公正性の観点から見て許しがたいことだ」と述べました。

 そのうえで、「去年の選挙では1億5000万円という自民党の中でも極めて異例と言われるような資金が河井陣営に提供されているが、党本部が1つの選挙区に立てた複数の候補者のうち、一方に10倍の資金を提供して肩入れするといったことは過去に類を見ない。政権政党として当然政治的・道義的責任があり、資金が提供されたプロセスを明らかにする必要がある」と指摘しました。

 そして、「河井前法務大臣は政権中枢に非常に近いと言われており、今回の事件は安倍政権にとって大きな打撃とならざるをえないだろう。なぜこういった問題を抱えた人物を法務大臣という最も法を順守しなければならない役職に任命したのか。単なる任命責任というだけではない責任が問われることになると思う」と話しました。

◇疑惑浮上から逮捕までの経緯は
 およそ8か月前まで法務行政のトップだった前法務大臣の夫妻による前例のない選挙違反事件。一連の経緯をまとめました。

 河井案里参議院議員の陣営の選挙違反疑惑が最初に浮上したのは去年10月。去年7月の参議院選挙でいわゆるウグイス嬢に法律の規定を上回る報酬を支払っていた疑惑などが週刊誌で報じられ、選挙後の内閣改造で、法務大臣に就任したばかりだった夫の河井克行前大臣は就任からわずか50日後に辞任しました。

 事件が動いたのはことし1月15日。広島地方検察庁はウグイス嬢に違法な報酬を支払った公職選挙法違反の疑いで広島市内にある河井夫妻の事務所や自宅マンションの捜索に乗り出しました。

 河井夫妻はこの日の夜、ぞれぞれ取材に応じましたが、捜査中であることを理由に疑惑には答えず、離党や議員辞職は否定しました。

 およそ1か月半後の3月3日、広島地検はウグイス嬢に違法な報酬を支払ったとして夫妻の公設秘書らを公職選挙法違反の運動員買収の疑いで逮捕。

 河井夫妻の議員会館の事務所も捜索し、その後、夫妻から任意で事情聴取しました。

 検察当局は一連の捜査の過程で現金の配布先とみられる広島県内の市長や町長、地元議員、それに後援会幹部など合わせて100人以上の名前や金額が記載された複数のリストを押収。

 河井夫妻が保守分裂の激しい選挙戦のさなかに票の取りまとめを依頼する目的で、幅広い関係者に現金を配っていた大規模な現金買収の疑いが浮上しました。

 検察当局は東京地検特捜部などの検事を広島に派遣して捜査態勢を拡充。ウグイス嬢に対する運動員買収の罪で夫妻の公設秘書2人を起訴したあとの3月下旬からはリストに記載された地元議員などの一斉聴取に乗り出します。

 その結果、現金が配られた疑いがある地元議員ら100人近くの大半が河井夫妻から現金を受け取ったことを認めました。

 このうち、安芸太田町の小坂真治町長は報道陣の取材に河井前大臣から現金20万円を受け取ったことを認め、4月9日、道義的責任を取るとして辞任。

 小坂前町長は、河井前大臣から「保守系の票を分けることができれば、自民党の2人が当選できる」などと話をされ、帰り際に現金が入った白い封筒を渡されたと説明しました。

 検察は地元政界を巻き込んだ大規模な買収が行われた疑いがあるとみて、その後も複数の県議会議員や市議会議員の自宅や事務所などを次々に捜索。

 4月28日には、広島県議会の自民党系の3つの会派の控え室を捜索し、広島県の湯崎知事は記者団に対して、「議会という神聖な場に強制捜査が入る深刻で重大な事態だ。関係者には必要な説明責任を果たしてもらいたい」と述べました。

 NHKの取材に対しても、少なくとも10人を超える地方議員や後援会幹部らが去年3月以降、河井前大臣や案里議員から「陣中見舞い」や「当選祝い」などの名目で数万円から数十万円の現金を受け取ったと証言。

 そのうち複数は違法性の認識を認めましたが、「後日、返金した」などと説明する人もいました。

 検察当局は、大型連休の後半に改めて河井夫妻を任意で事情聴取しました。

 そして、検察当局は一連の捜査の結果、河井前大臣が票の取りまとめを依頼する目的で、地元議員や後援会幹部ら100人近くに現金およそ2400万円を配り、案里議員自身も現金百数十万円を配っていた疑いがあると判断。

 新型コロナウイルスの感染拡大や定年が延長された東京高等検察庁の黒川検事長が賭けマージャンで辞職した問題なども踏まえ、国会の閉会を待って河井夫妻の逮捕に踏み切ったとみられます。

 河井前大臣と案里議員は17日、これ以上党に迷惑をかけたくないなどとして自民党に離党届を提出し、受理されました。

 関係者によりますと、河井夫妻は、違法な行為はしていないなどとして、議員辞職はしない意向を示しているということです。

◇夫婦二人三脚で政治活動
 河井克行前法務大臣と、妻の案里参議院議員は、夫婦そろって政治家として、長く同じ事務所に拠点を構え、二人三脚で活動を続けてきました。

 克行氏は、衆議院広島3区選出の当選7回。安倍総理大臣や菅官房長官に近いとされ、総理大臣補佐官や、自民党の総裁外交特別補佐などを歴任してきました。

 妻の案里議員は、この間、同じ地域を地盤とする県議会議員を務めながら、夫の国政活動をサポートしてきました。

 去年7月の参議院選挙で、案里議員は、定員2人の広島選挙区に、自民党の2人目の候補として擁立されて、みずからも国政進出を目指すことになり、夫の克行氏が選挙運動を支えました。

 案里議員は、党本部をあげた支援を受けて、地元の県連組織が推した当時の現職だった溝手顕正氏を、保守分裂さながらの激しい選挙戦の末に破って初当選。

 参議院選挙を終えて、去年9月。克行氏は、法務大臣として初入閣を果たした一方、案里氏は、自民党の二階幹事長が率いる派閥、二階派に入会し、国政活動を本格化させました。

 しかし、これからわずか2か月たらずの去年10月。案里氏の参議院選挙の際、陣営がウグイス嬢に違法な報酬を支払っていた疑惑が週刊誌で報じられました。

 克行氏は、週刊誌の発売当日に法務大臣を辞任。その後、検察当局による捜査が始まり、河井夫婦2人がみずから地元の地方議員や後援会幹部などに、現金を渡していた買収の疑いも浮上しました。

 夫婦ともに買収行為を否定していますが、いずれも一連の疑惑について詳しい事実関係の説明責任を果たしていません。
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