<< July 2020 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「虎ノ門ヒルズ駅」開業 東京メトロ日比谷線で 56年ぶり新駅 | main | コロナ感染ゼロだけではない、岩手のすごさの秘密 >>
コロナ低死亡率の原因、医師が推測
◎【コロナQ&A】なぜアビガンは承認されない? 11の疑問に医師が答えた
 (2020/06/06 10:00 AERA dot.)

 緊急事態宣言が解除されてひと息つけたところだが、油断せずに新型コロナウイルスの感染拡大の第2波に備えておきたい。噂やデマに惑わされないためにも、検査や治療薬、ワクチンなどの疑問を解消しておこう。

*  *  *

Q1:感染拡大の第2波はいつ来る?

 しばらく新規感染者ゼロが続いていた北九州市で5月23日から29日までの7日間で累計69人の感染者が確認された。うち27人の感染経路はわかっていない。第2波の兆しなのか。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう予測する。

 「局所で抑え込めればいいが、周辺に広がれば第2波となる可能性がある。中国の武漢や韓国でも小規模な集団感染が起きている。ただ、世界規模で見ると北半球で感染が収束しつつある中、これから冬場となる南半球の南米、アフリカで感染者が急増している。日本も冬場の感染拡大のリスクのほうが高いと考えられる」

 グローバルヘルスケアクリニック院長の水野泰孝医師もこう語る。

 「第2波はいつ来ても不思議ではないが、感染者が増えたところで再び外出などの自粛要請、これまで通りのマスクの着用や手洗いを徹底すれば市中感染を最小限に抑えることは可能と見ています」

Q2:欧米より日本の致死率が低い理由は?

 日本の致死率が約5.3%、中国が約5.6%なのに対し、フランスは約15%、英国とイタリアが約14%と、アジア諸国の致死率が低い。その理由について、ゲノム医療の第一人者でシカゴ大名誉教授の中村祐輔医師はこう指摘する。

 「アジアと欧州ではウイルスの遺伝子配列がかなり違う。因果関係はわかっていませんが、ウイルスの毒性が関係している可能性もある。他にも、アジアで過去にコロナウイルスの感染が広がったことで、今回の新型コロナにもある程度、免疫反応を起こしているのではないかという見方もある。人種によって白血球の型が違うので免疫反応が異なる可能性もある。さまざまな理由が考えられます」

Q3:ウイルスの毒性が強まる?

 中村医師がこう語る。

 「新型コロナは遺伝子変異をくり返し、いまではウイルスの種類は万単位の情報になっています。100年前のスペイン風邪は第2波で病原性が強まり、世界中で多くの死者を出した。第1波が広がった中で多くの変異を遂げたからです。新型コロナも毒性や感染力が強まる恐れは十分あります」

 立ち遅れたPCR検査体制やウイルスの遺伝子解析の整備が急務だ。

Q4:ワクチンはいつ完成する?

 英オックスフォード大がコロナワクチンの後期臨床試験を開始したが、喜ぶのは早い。水野医師がこう説明する。

 「製剤は比較的早くできると思いますが、私たちのところに届くまでに時間がかかると思われます。ワクチンを接種することによる有害事象が出る可能性もあります。まずは臨床試験で安全性を確認した上、次のステップできちんと免疫ができるか有効性が検証されます。さらに多くの人を対象に大規模な治験が行われる。そこで有効性のエビデンスが得られれば、ようやく量産体制に入ります。ワクチンが発売されても優先順位がある。まずは医療従事者や高齢者などハイリスクの人が優先になると思われます」

 健康な一般の人々に回ってくるまで、2〜3年はかかりそうだ。

Q5:ワクチンの開発は難しい?

 新型コロナはインフルエンザと同様に、遺伝情報をDNA(デオキシリボ核酸)ではなく、RNA(リボ核酸)の形で持つRNAウイルスだ。中村医師が語る。

 「RNAウイルスは変異しやすく、一般的にワクチンができにくい。インフルエンザもシーズンごとにタイプが違うので抗体が有効ではなくなり、毎年、新しいワクチンを打つ必要がある。やはりRNAウイルスのエイズ、同じコロナウイルスによるSARS、MERSにもまだワクチンがありません」

Q6:アビガンはなぜなかなか承認されない?

 さまざまな既存の薬物が新型コロナの治療に使われているが、期待が高まっていたのが新型インフルエンザ治療薬のアビガンだ。

 安倍首相は5月中の薬事承認を目指していたが、厚労省が慎重姿勢を崩さず、承認は見送りになった。現在、アビガンの新型コロナへの使用は保険適用外で、改めて治験で安全性と有効性が確認されなければならない。

 藤田医科大で薬を使った経過観察も行われたが、有効性の評価は示されなかった。一方で、副作用として催奇性がわかっており、妊婦に投与すると胎児に奇形が生じる恐れがある。上医師が説明する。

 「早期の承認を目指すなら、感染者が増加傾向にあった2月か3月の時点で治験を行うべきだった。収束に向かうと患者が減っていくので大規模な治験ができません。もちろん、承認を急ぎすぎると間違いの元になりますから、徹底した情報開示で学術界やメディアによる検証が必要です」

Q7:レムデシビルが早期に承認された理由は?

 一方、日本で承認されていなかった、米国のエボラ出血熱の治療薬候補のレムデシビルは、厚労省が医薬品医療機器法に基づいて「特例承認」した。重症者に静脈注射で投与する薬品だ。水野医師がこう話す。

 「米国で新型コロナ患者への緊急使用が認められていたこともあるのでしょう。レムデシビルは回復が難しい患者さんに、藁にもすがる思いで救命のために投与する薬。腎機能障害などを起こす可能性があるなど副作用もありますが、人道的見地から認められたのだと思います」

Q8:実際の市中感染の割合は?

 新型コロナの感染歴を調べる抗体検査は、感染後、体内にできるタンパク質(抗体)の有無を調べる。その結果から、厚労省は東京都の陽性率は0.6%と発表した。推計される感染者数は約8万4千人だが、検査対象が献血だったため疑問符が付いた。日本赤十字社が感染の疑いのある人の献血を断っているからだ。上医師が語る。

 「私が勤務するナビタスクリニックで受診者を検査したところ陽性率が5.9%でした。一般クリニックで年齢層が若く、検査を希望した人たちだから実態よりやや高い結果になっていると考えられます。抗体ができていない人や偽陽性も考えれば、実際の陽性率は数%程度という予測が、一番しっくりきます」

 慶応義塾大学病院が無症状の患者にPCR検査をした結果も陽性率約6%だった。仮に3%で東京都の感染者数を推定すると約42万人だ。

Q9:抗体検査の精度は? どんな人に有効か。

 厚労省の研究班による抗体検査キットなどの性能評価で500検体から2例(0.4%)の偽陽性が出た。100%とは言えないが検査機器の精度は向上しており、ある程度は信頼できそうだ。上医師が語る。

 「第2波に対応するためにも、医療従事者、介護職員、学校の教員などの抗体を調べておく必要があります。ほかにも、飲食店関係や営業職など不特定多数と接触する人はリスクが高い。検査体制の拡充が必要です」

Q10:超過死亡ってどういう意味?

 超過死亡とは、インフルエンザ流行時の死者数を推計する際などに用いられる指標。非流行時の死者数(がんや心疾患など)をベースラインとして、流行時の実際の死者数と比較する。何らかの感染症が流行していなければ超過死亡は起きない。国立感染症研究所の「インフルエンザ関連死亡迅速把握システム」によると、東京23区では2月中旬から3月までの5週間にわたって、毎週50〜60人の超過死亡が確認されている。

 上医師が指摘する。

 「年明けはインフルエンザが収束しており、新型コロナの流行と符合します。PCR検査が増え始めたのはオリンピック延期を決めた3月末以降のこと。厚労省の感染症対策がいかに遅れていたか、一目瞭然です」

Q11:コロナ治療費、自己負担ならいくらかかる?

 指定感染症である新型コロナは検査も治療費も公費負担。仮に自己負担になったら膨大な費用がかかりそうだ。水野医師が説明する。

 「PCR検査は外注検査の場合、保険点数で1800点(1万8千円)、抗原検査は保険点数で600点(6千円)ですが、判断料などを入れるとさらに費用がかかる。入院すると隔離の必要があり、いろいろな薬も使うし、重症例では集中治療も必要。ICUに入ったら相当な費用がかかると思います」

 基本的に患者側には請求されないが、病院でPCR検査を受けた場合の初診料等は自己負担が発生する。やっぱり感染しないように気をつけたい。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日  2020年6月12日号
| 福祉・医療と教育 | 22:42 | comments(0) | - |