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再雇用も、定年退職後に悩むシニア
◎在宅ワークや海外転職も。定年退職後に悩むシニアのキャリアの生かし方
 (2020/05/15 19:00 Forbes JAPAN 廣田壽子)

 日本では定年年齢は一般的には60歳だが、年金支給の65歳までには5年間あることから、再雇用、再就職を希望する人が多い。しかし、定年後は主戦力からはずれた後方支援が多く、異業種に配置されることもよくある。

 60代になると雇用の機会が激減し、キャリアがあり、やる気があってもそれを活かされないことが多い。

 筆者は日本の企業で働いた後、上海へ渡り現地に住み中国の大学で約8年間日本語を教えた経験をもつ。実は中国では日本のビジネスマンは技術力が高く、優秀な人が多い、と評価されており、60歳を過ぎたシニアにも引きがあった。仕事ができて働く意欲を持ちながらも、日本国内の厳しい就職事情の中で悩むシニアの心情を鑑み、そのキャリアと豊富な知識を活かせる方法を探ってみた。

◇再雇用後の給料は半減
 定年を迎えても「家のローンがまだ残っている」、「子供がまだ学生で学費を仕送りしなければならない」などシニアはさまざまな経済的課題を抱えている。さらに、年金を受け取るまでの5年間をどう凌いでいくか、といった問題で頭を抱えている家庭も多い。

 このような中、日本政府は企業に対して、高年齢者雇用安定法によって定年を迎えた社員が65歳まで働ける環境づくりを義務づけた。これは、定年を65歳未満に定めている企業に対して、65歳までの雇用を確保するため、

1. 定年年齢の引き上げ、

2. 継続雇用の導入、

3. 定年制の廃止

の中からいずれかの措置を導入することを義務づけるもの。

 現在、ほとんどの企業は「継続雇用制度」を選択している。継続雇用とは社員に一旦、辞めてもらった後、新たに嘱託社員やパートタイマーという雇用形態で労働契約を結ぶものだ。

 新契約では現役時代に比べて勤務日数や勤務時間を減らすこともあり、社員の給料は現役時代に比べて50%〜60%にダウンする。グループ会社や子会社での再雇用も認められているので、その場合の減額率はさらに大きくなる。

 「70歳までの就業機会の確保を図る」という安倍首相発言もかつて注目を浴びたが、厚生労働省は、高齢者の希望次第で70歳まで働くことができるように2021年4月から「企業の努力義務」とすることを決定した。高齢者が働きやすい環境づくりは今後さらに進むだろう。

◇企業が提示するシニア向き職種
 一方、定年前とは異なる企業に入社するのが「転職」、「再就職」だ。転職先を探すのによく利用されるのが人材派遣会社のサイトだが、60歳以降の求人状況は非常に厳しい。実際にいくつかのサイトにアクセスしてみた。

 特に高度な資格や技術を持たない人の場合、ビル・マンション管理、ガス設備保安・メンテナンス、警備、梱包、清掃、バス送迎、接客、販売、調理補助などの職種に限られる。単純作業で手仕事が多い。給与は時給1500円以下、月給では20万円以下だ。

 ただし、例外もあり、「主任技術者免許保有者」の資格があることを条件に、電気設備トラブル対応の求人がある。待遇は契約社員で月給50万円と高給だ。また、大阪市内のある建築会社は「建築現場の現場監督」を60歳以上のシニア歓迎として募集している。待遇は正社員で、月給は能力と経験次第で36〜55万円。

 60歳以上の女性の再就職はさらに厳しく、職種がかなり限られてしまう。清掃、販売、介護、調理補助、梱包、販売、病院内での事務補助などだ。ただし、薬剤師など資格があり経験もある人については応募の道が開かれている。 

◇転職成功の秘訣は、新職場の一員になりきる
 就職の条件が不利でも家庭の事情から働かざるをえない場合もある。新しい職場で社員とうまくつきあい、長く働くためには、どのような心構えが必要なのだろう。シニア専門人材会社でコンサルタントをしていた生島一朗氏は再就職に成功するポイントについて次のようにアドバイスする。

 「一番難しいのが大企業の事務職を退職した人ですね」。自身も大企業からの転職組の一人で、「以前なら相手から挨拶してくれたが、これからは自分の方から挨拶するようにしたい。オフィスの整理や清掃などは自分の仕事ではないと考えないで社員と一緒にやることですね。この一緒になってやるという姿勢が大切なのですよ」と強調する。

 つまり協同作業を通じて自分も職場の一員だという自覚をもつ、周囲からもそんな自分を感じてもらうことがうまくいく秘訣だというのだ。

◇自由に働く環境をつくれる在宅ワーク
 しかし、長年、企業の事務部門や営業部門でバリバリ頑張ってきた人の中には、「シニア向けの仕事では働くモチベーションが上がらない、過去の経験を活かせる仕事はないものか」と考え悩む。希望するポジションがあっても年齢を理由に断られることもよくある。

 それでは、いっそのこと自らが経営者となって事業を創出できれば、と考える人もいるだろう。だが、実際に起業となると、オフィス賃貸料や人の雇用などまとまった初期投資が必要だ。また、会社経営は初めてという人がほとんどだろうから、起業後は波乱続きが予想される。

 開業にお金をかけたくない、という人には自宅をオフィスに手軽に始められる「在宅ワーク」(自営型テレワーク)が選択肢に上る。在宅ワークとは厚生省の「在宅就業者総合支援事業」サイトによれば、「企業などから委託を受けてパソコンなどを活用して自宅などで仕事をする、企業などに雇われない働き方」と定義される。在宅ワークの職種には、設計・製図、システム設計・プログラミング、ウェブサイト作成、ライター、翻訳、文字起こしなどがある。

 在宅ワークで働く人はシニアも少なくない。71歳のAさん(女性)は現役時代はソフト会社で介護保険ソフトのヘルプデスクをしていたが、65歳で定年退職。その後自宅で文字起こしの仕事を始めた。現在、仲介業者2社から仕事を受注している。「自分の時間を自由に使えるのは良いことだが、コンスタントに仕事の受注が来ないことが悩みだ」という。

 また、まもなく60歳になる編集ライターのTさんは、元々は商社で広報活動を担当し、情報誌やウェブ記事の制作に携わった。30代後半で育児のために退社、在宅ワークに切り替えた。それから24年間、今では記事執筆、出版企画、ウェブ記事制作など幅広く仕事をこなしている。Tさんは、「仕事が楽しく、オーバーワークになってしまうことが悩みだ」と話しており、仕事が多く継続的に受注していることが伺える。

 在宅ワークは一定の精度の成果物を期限までに納入しなければならない、というノルマがあるが、評価されるのは成果物であり、年齢や性別など仕事をした人の属性ではない。メリットは自分で仕事の時間を決められ、会社で働くように上司や周囲に気を遣うことがないことだ。マイペースで仕事がしたい、仕事に集中したいという人には良い働き方であるといえる。

 在宅ワークで道を切り開くシニアも少なくない。(Shutterstock)

◇海外で引きが大きい日本人エンジニア
 ところで、前述のシニア就職コンサルタント生島氏によれば、海外では日本の技術力に対する評価が非常に高いことから、日本人エンジニアの引きが大きいという。中国、東南アジア、中近東の国々では経験豊富な60歳以降のシニアエンジニアの再就職が増えているらしい。

 中国の就職サイトを見てみると、機械、電気・電子、建築土木、自動車などの分野での技術者の募集が多い。職種は品質管理責任者、製品技術の対応支援、現場と技術部門との取りまとめ役などで、給料は経験者の場合20000元〜25000万元(約30〜38万円)だが、現地給料の水準を上回る額だ。日本人エンジニアの場合、給料以外にも住宅費や一時帰国費を会社が負担することが多く手厚く迎えられる。

 上海など日系企業の進出が活発な都市では、財務経理、営業などの分野でも日本人を求めている企業や学校がある。日系大手人材会社では、「日系企業の取引先はやはり日系企業が多いので、営業は日本人を希望するところが多い。日本語を話す現地スタッフはいるが、「あうん」の呼吸は日本人同士でないと伝わりにくく、日本人のビジネスマナーも高い評価を受けています」と話す。

 また、中国では日本語を学ぶ学生が海外で一番多い(約100万人、外務省2018年度統計より)ことから、日本語教師の需要もある。という筆者も上海の大学で日本語教師をした経験をもつ。日本のマスコミ企業で働いた後、55歳で上海へ。上海復旦大学で中国語を学び、現地で就職活動を開始し、日本語教師の職を得た。就職活動を通じて感じたことは、中国はその人の実力を重視するところが大きく、能力があり、やる気がある人に対しては、年齢や男女の性別に関係なく、就職の道が開かれることだ。

 ただし、上海での生活費は高く、中でも大きなウェイトを占めるのが住居費だ。中国の経済成長に伴い家賃の上昇率が大きい。筆者も2011年から数年間、長寧区(中心部)の中国人住宅に家を借りていたが、2011年当初の家賃は東京の6〜7割程度だったが、その後毎年の契約毎に20%増で高騰していった。

 食費についてはどこで食材を購入し、食べるかによって開きが大きい。地元の中級食堂は安いが、日系企業が集まる長寧区の日系スーパーや日本食レストランは高い。1回に使うお金は地元の場合一人40元(600円)前後で済むが、日系企業が集まる地区にある日本料理店では200元(3000円)以上はする。当時心がけていたことは、中国系スーパーか商店で食材を購入し自炊することと高級な日本料理店に行く回数を控えることだった。

 つまり、海外で上手に暮らす秘訣は、地元でおいしく新鮮で安い食材を売る店を探して利用することで、それは現地の人々とのコミュニケーションの好機ともなる。

◇既成概念にとらわれない就職活動
 定年退職後も働きたいという人の心情を鑑みると、経済的必要性に加えて、知識や経験を活かして働きたいと考えているようだ。残念ながら、日本の労働市場は60歳を過ぎたシニアに厳しく、シニアが活躍する場が少ない。

 一方、海外では日本の技術力や日本のビジネスマナーに熱い視線が注がれていることから、日本人シニアへの引きもあり、キャリアを活かすチャンスである。

 日本で就職活動をするとき忘れてはならないのが人材会社のサイトでは入力項目に上がってこない部分があることだ。その一つが「人脈」だ。人脈はその人の財産というべきもので、「信頼できる人」という太鼓判を押されて入社を望まれた、共同事業者としての誘いを受けた、という例もある。

 人生100年時代。60歳は第二の人生のスタート地点だ。自分が社会の中で活かされているという自覚をもって楽しく働く方法を模索したい。
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