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外国人旅行者向け「夜の経済」活性化なるか シンポジウム開催
 海外に比べ日本は夜の時間帯に外国人旅行者が楽しめる娯楽が少ないと指摘されるなか、夜の経済(「ナイトタイムエコノミー」)を活性化させようとシンポジウムが開かれ、国内外の先進事例が紹介されました。

◇先進的な事例を紹介
 26日、都内で開かれた「ナイトタイムエコノミーシンポジウム」は、民間の団体が観光庁と共催したもので、自治体や事業者などおよそ200人が参加しました。

 シンポジウムでは、まず観光庁の田端浩長官が、「日本は夜、娯楽サービスを楽しめない状況です。地方と連携して、魅力ある国にしていきたい」とあいさつしました。

 続いてオランダのアムステルダムで「ナイトメイヤー」(“夜の市長”)を務めたミリク・ミラン氏が、「行政と民間事業者、それに住民が連携して取り組む必要がある。深夜まで公共交通機関が動いていることも重要で、ロンドンではオリンピックをきっかけに金曜、土曜は地下鉄が24時間運行するようになった」と述べました。

 このほか、温泉を利用した大分県別府市の夜のイベントや、忍者のショーを船で楽しめる大阪・道頓堀のナイトクルーズなど、先進的な事例が紹介されました。

 観光庁によりますと、外国人旅行者の1人当たりの消費額はここ数年、伸び悩んでいて、夜に楽しめる娯楽を増やすことで飲食や宿泊を伴った経済効果が期待できるということです。

 シンポジウムに参加した愛知県観光協会の担当者は、「愛知県は欧米からの観光客が少ないのが課題で、どうすれば夜に楽しんでもらえるか、きょう得た多くの事例をもとに考えていきたい」と話していました。

◇歌舞伎町の成功例「ロボットレストラン」
 外国人旅行者の夜の需要の取り込みに成功したのが、新宿・歌舞伎町にある「ロボットレストラン」です。

 ロボットどうしが戦いを繰り広げたり、暗闇の中、光る衣装を着たダンサーが踊ったりするショーを楽しむことができます。刀や太鼓を使った日本らしさを感じられる演出もあり、客の9割以上は外国人だといいます。

 入場料は飲食代が別で8500円と安くはありませんが、1日4回、夜遅くまである公演は毎回、192ある客席がほぼ満席だということです。

 レストランではすしや幕の内弁当が味わえるということで、外国人の客は、ショーの間の休憩時間になると、ビールなどを次々に注文していました。

 オーストラリア人の女性は、「最後まで飽きさせないショーで楽しめました。たくさんお金を使いましたが、このショーの内容なら高いとは思いません」と話していました。

 歌舞伎町は、飲食店や風俗店がひしめきあい「アジア最大の歓楽街」とも言われていましたが、だんだんと様変わりし、多くの外国人旅行者が訪れ、オシャレな店も建ちならぶようになりました。

 しかし、歌舞伎町に旅行に来ていたギリシャ人の男性は、「日本は夜にゆっくり飲めたり、文化を楽しめるところが少ないと思います。自分の街では、朝の4時や5時まで楽しむこともよくあるし、せっかく休みできているので、もっと遊びたいです」と話していました。

◇夜の経済(「ナイトタイムエコノミー」)がカギ
 去年1年間に日本を訪れた外国人旅行者は3119万人と、6年連続で過去最高を更新しました。

 政府は東京オリンピック・パラリンピックが開かれる来年2020年、外国人旅行者を4000万人、消費額を今の2倍近くの8兆円に引き上げることを目標にしています。

 しかし、課題となっているのが、ヨーロッパやアメリカなどの海外の都市に比べて、夜の時間帯に楽しめる“娯楽が少ない”という問題です。

 そのカギとなるのが、夜の経済(「ナイトタイムエコノミー」)。外国人旅行者の夜の需要をいかに取り込めるかにかかっていると言われています。

 日本では外国人旅行者の数が増えている一方で、旅行で使うお金は、1人当たり15万円とここ数年、伸び悩んでいます。

 OECD(経済協力開発機構)がまとめたデータによりますと、外国人旅行者が滞在中に「娯楽サービス」に使ったお金の割合は日本では2.5%だったのに対し、アメリカを訪れた外国人旅行者では12.2%、フランスでは11.1%、カナダでは10.9%などとなっています。

 観光庁が行ったアンケート調査でも、夜に楽しめる娯楽やサービスを体験した外国人旅行者が海外に比べて少なく、満足度も低いという結果が出ています。

 ことしの観光白書では、「ナイトショー・ナイトライフは訪日外国人旅行者のニーズは大きい一方、供給は不十分」とか、「これまで十分に活用できていなかった夜間という時間市場を開拓/充実させることが重要である」と触れられています。

 また、先日発表された「世界都市ランキング」でも、夜の観光スポットが少なく、ナイトライフの充実度に乏しいことが、“東京の弱点”と指摘されました。

 観光庁によりますと、海外では、夜8時以降に開演するエンターテインメントショーやライブ、美術館や博物館などの文化施設を活用したツアー、まち全体を使ったイベントなどが人気を集めているということで、日本でも夜、楽しめる場所を増やすことで飲食や宿泊を伴った消費につながり、経済効果が期待できるということです。

 一方で課題もあります。深夜まで開く店や施設が増えれば、治安の悪化につながりかねないという地域からの懸念があるほか、事業者側からは、人手不足や働き方改革、従業員が電車で帰れなくなるといった理由で「営業時間を延ばしたくない」という声が少なくないということです。

◇苦戦している施設も
 外国人旅行者の取り込みに苦戦している施設もあります。

 東京・中央区の京橋エリアにある「京橋エドグラン」には、区の観光情報センターや世界の食料品を扱うスーパーマーケットなどが入り、日中の時間帯は外国人旅行者が多く訪れます。

 しかし、周辺には夜、外国人が楽しめるスポットが少なく、すぐ近くにある銀座に流れてしまうため、夜の集客は伸び悩んでいるということです。

 夜の時間帯に外国人旅行者を呼び込みたいと、施設では、周りのオフィスなどに配慮して夕方までに限定していた音楽イベントを、10月から、夜8時すぎまでに延ばすことにしました。

 さらに、都の助成金を使って、英語も併記したイベントのパンフレットも5000部つくりました。

 しかし、これまで3回開催したイベントでは、いずれも外国人の客は数人しかいなかったということです。

 この施設では、「ナイトタイムエコノミー」の活性化のためには、行政や地域の協力を得て一体となって進める必要性を感じているといいます。

 この施設を管理する日本土地建物の藤枝雅幸資産マネジメント第二部長は、「この街のイメージを行政や地元の人たちと一緒に作り込んでいく必要があると感じています。たくさんの方に来ていただきたいと思っていますので、PRを続けていきたい」と話しています。

◇豊島区は「夜のガイドマップ」を検討
 東京オリンピック・パラリンピックを来年に控え、対策を急いでいるのが東京・豊島区です。

 「国際アート・カルチャー都市」を目指している豊島区は11月、池袋の区役所跡地に芸術文化劇場をオープンさせ、来年の夏には、そこを含む合わせて8つの劇場が入る複合施設「ハレザ池袋」が完成する予定です。

 オリンピックでは多くの外国人旅行者が訪れると予想されることから、観劇を終えた人たちに夜までとどまってもらうことで、街を活性化させたいと考えています。

 豊島区の宮下あゆみ文化観光課長は、「公演のあとに、周りの店で食べたり飲んだり、ゆっくり過ごしてもらえる、生まれ変わった池袋の街をつくっていきたい」と話しています。

 そこで制作を考えているのが、外国人向けの「夜のガイドマップ」です。いまあるガイドマップは、日中あいている店や施設が多いため、あえて夜の時間帯に絞ったものを作ろうとしています。

 しかし、課題もあります。去年、商店街で行われた夜の営業を充実させた実証実験では、外国人から高い評価が出た一方で、店側からは、人手不足や従業員が終電までに帰れなくなるなどの理由で「営業時間をこれ以上延ばしたくない」という意見が6割を占めました。

 このため豊島区では、まずは周辺でコンサートなどのイベントが行われる日に限定するなど、負担にならない範囲で営業時間を延ばしてもらえないか、理解を求めていくことにしています。

 豊島区の宮下あゆみ文化観光課長は、「豊島区は“怖い”という印象から、地域住民とのパトロールや防犯カメラなど“安心”も高めることで変わってきています。宿泊するホテルが池袋でも、新宿や渋谷に遊びに行ってしまう外国人観光客が多いので、店の営業時間を延ばしてもらうのは簡単ではありませんが、区全体で夜を活性化させることで、店側の利益も上がることを理解してもらえるよう取り組んでいきたいです」と話していました。

◇オリンピックまでに最大限の努力を
 コンサルティング会社の代表で、ナイトタイムエコノミーに関する観光庁の協議会の委員を務める梅澤高明さんは、「昼の観光客獲得競争はこれ以上は食い合いになってしまうが、夜はこれからの市場で、世界でも競争が始まっている。ナイトタイムエコノミーは大都市だけの話ではなく、地方でも、例えばお城で夜のイベントを開けばそこで宿泊の需要が生まれる。工夫することで文化と経済で発展できる大きなチャンスが来ていると全国的に考えるべきだ」と話しています。

 また、来年のオリンピックについては、「東京に来年、外国からたくさんの旅行者が来るが、競技を見に行く時間以外のほうが圧倒的に多い。オリンピックまでに完璧な夜のコンテンツを準備するのは間に合わないにしても、最大限の努力で訪れる人たちにいろいろな体験をしてもらえるかが、この先の観光立国に向けて大きなポイントになる」と話しています。

 一方、課題については、交通機関の運行時間や住民などとの合意形成を挙げました。梅澤さんは、「ナイトタイムエコノミーが発展しているベルリンやアムステルダム、ニューヨークでは、深夜でも交通網が動いていて何時でも好きな時間に帰れるという状況がつくられている。自治体としては美術館や博物館、公園の夜間の使い方に自由度を出してもう少し遅い時間までいろんなイベントができたほうがいい。近隣の住民から苦情が出るかもしれないが合意形成をどうしていくかが大事になってくる」と話していました。

◇「ナイトメイヤー」(“夜の市長”)とは
 ミリク・ミラン氏は、もともとイベントのプロデューサーをしていて、アムステルダム市民の投票で「ナイトメイヤー」(“夜の市長”)に選ばれ、2012年から6年間務めました。

 市長にもアドバイザーとして意見を求められる立場で、夜に開くイベントなどのプロデュースに携わり、民間事業者や住民との連携を促したり、泥酔する人が増えて治安が悪くならないよう対策を進めたりして、アムステルダムの夜の経済を活性化させたということです。

 この「ナイトメイヤー」の取り組みは、ニューヨークやパリ、ロンドンなどにも広がり、ミリク氏は、ナイトメイヤーたちのアドバイザーも務めているということです。
| 環境とまちづくり | 00:45 | comments(0) | trackbacks(0) |









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