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シベリア抑留の戦没者とされた遺骨「すべて日本人ではない」

 戦没者の遺骨を取り違えていた疑いが明らかになりました。終戦直後にシベリアに抑留されて亡くなった日本人のものとして厚生労働省の派遣団が5年前に収集し日本に帰還させた遺骨について、DNA鑑定をした専門家が「判別できた遺骨はすべて日本人ではない」とする鑑定結果を示していたことが、NHKの取材で分かりました。

 鑑定した専門家は、厚生労働省の非公開の会議などで「間違って収集した遺骨はロシア側に返すべきだ」などと指摘していましたが、厚生労働省はこうした鑑定結果を現在まで公表していません。

 旧ソビエトのシベリアなどに抑留された日本人のうちおよそ5万5000人が厳しい寒さの中で過酷な労働を強いられて亡くなったとされ、厚生労働省は平成3年度からロシア側から提供された埋葬者の記録などをもとにこれまでにおよそ2万2000人の遺骨を現地で収集し日本に帰還させています。

 しかし、5年前の平成26年8月、厚生労働省の派遣団が東シベリアのザバイカル地方で日本人のものとして収集し、すでに帰還させている16の遺骨について、厚生労働省からDNA鑑定を委託された専門家が、「16の遺骨のうち判別できた14の遺骨はすべて日本人ではない」とする鑑定結果を示していたことが、NHKの取材で分かりました。

 NHKが入手した議事録などによりますと、こうした鑑定結果は去年8月に開かれた厚生労働省の非公開の会議で報告され、その後、鑑定した専門家は、「間違って日本人ではない遺骨を持ってきたことが分かっているのだから遺骨はロシア側に返すべきだ」などと指摘していましたが、厚生労働省はこうした鑑定結果を現在まで公表せず遺骨も返還していません。

 関係者によりますと、問題の遺骨が収集された現場は主にロシア人が埋葬されている共同墓地の一角にあり、派遣団はロシア政府から提供された地図や現地住民の証言などを根拠に埋葬場所を特定していたということで、現場に日本人の遺骨かどうかを判断する日本側の鑑定人は同行していませんでした。

 戦没者の遺骨収集事業をめぐっては、日本兵のものとしてフィリピンで収集された遺骨の一部についても7年前、2人の専門家が「日本人とみられる遺骨は1つもなかった」とするDNA鑑定の結果をまとめていましたが、厚生労働省は去年8月にNHKがこの問題を報じるまで公表していませんでした。

 NHKの取材に対し厚生労働省は、「プライバシーの問題がありお答えできない」としています。

◇シベリア “取り違え” 現場は
 NHKが取材したところ、問題の遺骨が収集された現場は東シベリア・ザバイカル地方のボルジガンタイ村にあることが分かりました。

 ボルジガンタイ村にはかつて抑留された日本人の収容所があり、ロシア政府から抑留者の名簿や埋葬場所のおおまかな地図が提供されています。

 現場は村の中心部から南東に700メートルほど離れた小高い丘の上にある共同墓地の通路の部分で、周囲にはロシア人の墓地が点在していますが、厚生労働省の派遣団は地図や現地住民の証言などを根拠に日本人が埋葬されていると判断し16の遺骨を掘り返したということです。

 そして、最終的にはロシア人の鑑定人が日本人の遺骨だと判断したため、DNA鑑定に必要な一部の検体を除いて遺骨を墓地の近くの草原で焼き日本に持ち帰ったということです。

 派遣団を現場に案内したというボルジガンタイ村の村長はNHKの取材に対し、「抑留者がどこに埋葬されていたのかは実際には分かっていなかったが昔の住民が埋葬場所を記憶していたためそれに従った」と話しています。

◇独自入手 議事録の内容は
 NHKが入手した議事録などによりますと、遺骨を取り違えた疑いが最初に報告されたのは去年6月に開かれた厚生労働省の非公開の会議で、複数の専門家が「近くにロシア人の墓地がありますしひょっとしたら日本人じゃない可能性もありそうですね」とか、「今まで結構明らかに間違いだと思うのがいっぱいあるからロシアがこれだけ混ざっているとこれもだめなんじゃないかみたいな」などと発言しています。

 その2か月後の去年8月の会議では、DNA鑑定をした専門家が、「16の遺骨のうち判別できた14の遺骨はすべて日本人ではない」とする鑑定結果を示したうえで、「DNAのデータを比較すると日本人よりも明らかにほかの方が多い。結論からすると日本人らしきものはないので全部日本人じゃないだろうということです」と報告していました。

 そして、先月の非公開の会議では鑑定した専門家が、「厚生労働省は現場で日本人かどうか調べて持ってきているとすごく強調しているがDNA鑑定をやってみたら日本人が1人もいないというのはおかしいだろうと。たぶんロシアの現場にいた人類学の人がやって(鑑定して)記録があるからといって持ってきた。(遺骨の)形態で間違えていたら見るのは全然、基礎的な知識がない人ですよ。DNAが来て、現場から日本人ではないものを持ってきていることをみんな分かっているのに、これはやはりお返ししないといけないのではないかと。私はずっと考えてきたことなのでその点を考えて欲しい」などと指摘していました。

◇シベリアの遺骨収集事業とは
 終戦直後、旧ソビエトのシベリアなどに抑留された日本人のうちおよそ5万5000人が厳しい寒さの中で過酷な労働を強いられて亡くなったとされています。

 シベリアでの遺骨収集は、平成3年度から始まりロシア政府から提供された抑留者の名簿や埋葬場所の記録などをもとにこれまでにおよそ2万2000人の遺骨を現地で収集し日本に帰還させています。

 厚生労働省がまとめた手順書によりますと、埋葬資料などから日本人のみが埋葬されていることが明らかな場合は必ずしも人種の鑑定は行わなくてもよいとしていて、関係者によりますとこれまでシベリアの収集現場には日本側の鑑定人が立ち会わないケースも多かったということです。

 厚生労働省はロシア政府から提供された埋葬資料と実際の収容状況には異なるケースがあるなどとして、昨年度からは誤って現地住民の遺骨を持ち帰らないようすべての収集現場に日本から鑑定人を同行させるようになりましたが、5年前の現場に派遣されていたのは厚生労働省の職員2人だけで日本側の鑑定人は同行していませんでした。

◇過去にも遺骨混入の疑い
 戦没者の遺骨収集事業をめぐってはこれまでにも日本人以外の遺骨が混入していた疑いが指摘されています。

 厚生労働省の委託を受けた日本のNPO法人が日本兵のものとしてフィリピンで収集した遺骨をめぐっては、平成22年、フィリピン人のものが含まれている疑いが指摘され、厚生労働省は収集事業を一時、中断しました。

 そして、NPOが収集し現地に保管されていた遺骨のDNA鑑定を委託された2人の専門家が、「日本人とみられる遺骨は1つもなかった」とする鑑定結果をまとめていたことも去年、NHKの取材で明らかになりました。

 同じNPOがフィリピンで収集しすでに日本に帰還している遺骨の数はおよそ1万5000人に上り、現在は厚生労働省の霊安室に移して保管されています。

 しかし、厚生労働省はすでに帰還した遺骨については専門家の証明書が発行されていることなどを理由に、「フィリピン人のものが混入している事実は認められない」と説明しています。

 ただ、帰還した遺骨はすでに焼かれているためフィリピン人のものが本当に混入していないかどうか科学的に証明することが難しい状態になっています。

◇なぜ取り違え分かったか
 厚生労働省は平成15年度から収集した遺骨の身元を確認するためのDNA鑑定を行っています。

 DNA鑑定の対象となるのは原則として埋葬者の記録や名前が書いてある遺留品など身元につながる手がかりがある場合に限られていたため、主に埋葬記録が残っているシベリアなどの抑留者の遺骨で鑑定が行われてきました。

 遺骨は現地で焼いてから帰還させていますが、DNAの保存状態が良いとされる歯などは焼かずに持ち帰っていて、これまでDNA鑑定によってシベリアなどに抑留されて亡くなった1135人の身元を特定しています。

◇戦没者遺骨収集事業とは
 第2次世界大戦で戦死した日本人の遺骨収集事業は昭和27年度から始まりました。国内外の戦地のほか、シベリアなどに抑留されて亡くなったおよそ240万人のうちいまも半数近い112万人の遺骨が残されたままになっています。

 遺族の高齢化が進む中、3年前、戦没者の遺骨収集は国の責務と明確に位置づけた法律が成立し、2024年度までに遺骨収集を集中的に進めるとしていて今年度はおよそ23億6000万円の予算が計上されています。

(予算額)

 今年度 23億6100万円

 平成30年度 23億8000万円

 平成29年度 24億4300万円

 平成28年度 23億1300万円

 平成27年度 17億2500万円

 平成26年度 15億7600万円

◇元抑留者の男性「怒り感じる」
 通信兵だった埼玉県越谷市の座間三郎さん(94)は、終戦後、2年あまりにわたってシベリアに抑留されました。厳しい寒さの中で過酷な労働を強いられ、飢えなどで多くの仲間を亡くしたということです。

 座間さんは当時の状況について、「身ぐるみをはがれて、人間扱いされなかった。飢えで動けなくなった戦友が『ようかんが食べたい』と叫びながら死んでいったことが今でも夢に出てきて、いまだにようかんを食べることができない」と話しています。

 厚生労働省が日本人ではない遺骨を抑留者のものと取り違えていた疑いがあることについては、「お役所仕事の適当さに怒りを感じる。国の命令で戦地に赴き戦友たちがどのような思いで死んでいったと考えているのか。このような状況では戦友たちが浮かばれない。戦争の犠牲者のためにも国はもっと真剣に遺骨収集に取り組んでもらいたい」と話していました。

◇専門家「速やかに公表すべき」
 この問題について、遺骨収集に関する厚生労働省の専門家会議の委員を務める帝京大学の浜井和史准教授は、「国の責任で遺骨収集を進めると言いながら厚生労働省には1つ1つの遺骨に対して真剣に向き合う意識が欠けていたのではないか。取り違えが分かった段階で速やかに公表し、関係国にも情報を伝えるべきで国内的にも国際的にも責任を果たしているとは言えない」と述べ厚生労働省の対応を批判しました。

 その上で、「とにかく遺骨を日本に持ち帰ることだけが中心になっていて、遺骨が誰のものなのかという厳密な検証が行われてこなかったことは非常に問題だ。今回の取り違えはこれまで収集した遺骨の中にも日本人以外のものが含まれている可能性があることを示している。見つかった遺骨が日本人のものなのかどうかをしっかり鑑定する体制を整えることが急務で、その上で遺骨を遺族のもとに返していくという大きな仕組みを作らなければ今後も同じようなことが起きるのではないか」と指摘しています。
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