2019.06.30 Sunday
IWCを脱退 商業捕鯨再開へ
日本は30日、IWC(国際捕鯨委員会)から脱退しました。これに伴って、1日から商業捕鯨が31年ぶりに再開されます。
IWCはクジラの資源を保護しながら捕鯨を続けるために設立された国際機関で、日本は昭和26年(1951年)に加盟しました。
しかし、捕鯨に反対する国と支持する国との対立が深まり、IWCにとどまっていても商業捕鯨の再開が認められる可能性がなくなったとして、日本は去年12月に脱退を通告し、効力が発生する30日午前0時に脱退となりました。
これに伴って昭和63年(1988年)から中断していた商業捕鯨が、1日から31年ぶりに再開されます。
あすは山口県の下関市から、太平洋の沖合でクジラを捕獲する船団が出航するほか、北海道の釧路市からは沿岸で捕獲する船5隻が出航する予定です。
商業捕鯨は、十分な資源量が確認されているミンククジラなどを対象に、IWCで採択された方法で算出した捕獲枠を設けたうえで、日本の領海内とEEZ(排他的経済水域)に限って行われます。
一方で、環境保護団体などは日本の商業捕鯨再開を資源の保護や動物愛護の観点から強く批判しています。
このため政府は、クジラの資源量に悪影響を及ぼさない限られた範囲で行うことを強調し国際社会に理解を求めていくことにしています。
◇飲食店では期待の声
商業捕鯨の再開を前に、飲食店では鯨料理への関心が高まると期待しています。
東京・千代田区にある老舗の鯨料理店では、これまで調査捕鯨の副産物として流通しているクジラの肉を使って、刺身やステーキなどを提供してきました。
最近では健康志向の高まりで、赤身が多いクジラの肉が、これまでなじみが薄かった若い世代にも注目されるようになっているということで、商業捕鯨の再開は追い風になると期待しています。
鯨料理店の谷光男 代表は、「クジラの肉は高たんぱく、低カロリーで健康にもよい。商業捕鯨の再開をきっかけに若い人や女性にも関心を持ってほしい」と話していました。
一方、港区にあるメキシコ料理店は、現地では食材としてクジラの肉は使われていないものの、今後、消費者の関心が高まると見込んでクジラの竜田揚げを使ったタコスなど3品を考案し、1日から提供する予定です。
レストランのシェフの葛西慎太郎さんは、「クジラの肉はさっぱりして、どんな料理にも合う。多くの人が気軽に食べられる料理を提供したい」と話していました。
◇商業捕鯨行うノルウェーは
商業捕鯨を行っている国、ノルウェーのネズビク漁業相はNHKの取材に対し、「IWC脱退は日本が決めたことで、ノルウェーが意見すべきことではない。ただ、ノルウェーもIWCが機能不全に陥っていることを強く懸念している。捕鯨は持続可能な方法で行うことができる」とコメントし、今後も商業捕鯨を続けると強調しました。
ノルウェーは、1982年にIWCで決議された商業捕鯨の一時停止に異議を唱えました。
日本と同じようにいったん調査捕鯨に切り替えましたが、その後、漁の対象としているミンククジラは絶滅の危機にはひんしていないとして1993年に商業捕鯨を再開しています。
ノルウェーは、IWC(国際捕鯨委員会)に加盟しながら商業捕鯨を行っています。
また、IWCに加盟しながら商業捕鯨を行っているもう1つの国、アイスランドも商業捕鯨を続ける方針を示しています。
アイスランドは、IWCの方針に反発して一時、脱退し、その後、再加盟する際に商業捕鯨の一時停止を受け入れないと宣言して2006年に商業捕鯨を再開しました。
IWCの統計によりますと、2017年の捕獲数はノルウェーが432頭、アイスランドが17頭となっています。
これら2つの国は、去年9月にブラジルで開かれたIWCの総会で、生息数が回復しているクジラを対象に商業捕鯨を再開するという日本の提案に賛成しました。
◇イギリスでは反対のデモ
イギリスで29日、動物愛護団体などのメンバーが、日本の商業捕鯨の再開に反対するデモを行いました。
デモを行ったのは、イギリスを拠点に活動する動物愛護団体などで、ロンドンの中心部には、およそ50人が集まりました。
参加者はプラカードを掲げながら、「クジラを守れ」などと声を上げ、日本大使館の前に到着すると、「日本政府は商業捕鯨の再開を取りやめるべきだ」と訴えました。
主催した動物愛護団体のドミニック・ダイヤーさんは、「クジラの肉の需要は高くないのに、日本がなぜ商業捕鯨を再開するのか、理解に苦しむ」と話していました。
イギリスでは、公共放送のBBCが、日本の商業捕鯨再開について「国際社会の非難を無視した」と伝えているほか、大手新聞のタイムズも「捕鯨の必要はなく、単なるナショナリズムの表れだ」と論じるなど、批判的なとらえ方が多くなっています。
一方で、北欧のノルウェーやアイスランドは以前から商業捕鯨を行っていて、ヨーロッパの国でも、捕鯨に対する姿勢は分かれています。
◇IWC脱退の経緯
IWC(国際捕鯨委員会)は、クジラの資源を管理しながら、持続的に捕鯨を行うことを目的に1948年に設立された国際機関で、日本は昭和26年(1951年)に加盟しました。
IWCが設立された当初は、加盟国の多くが捕鯨を行っている国でしたが、その後、捕鯨に反対する国が大幅に増えました。
昭話57年(1982年)には商業捕鯨の一時停止が決議され、日本は異議を申し立てましたが、結局、これを受け入れ、昭和63年(1988年)に商業捕鯨を中断しました。
その後、日本は30年余りにわたって南極海などでクジラの資源量や生態を調べる調査捕鯨を続けながら、IWCの総会で20回以上、商業捕鯨の再開に向けた提案を行ってきました。
この間、IWCでは捕鯨を支持する国と反対する国の対立が深まり、本来は行われるはずの商業捕鯨の一時停止の見直しなど重要な決定ができない状況が長年、続いてきました。
去年9月の総会で日本はIWCの決議の方法などの改革案とともに、資源量が豊富な種類にかぎり捕獲枠を設定したうえで、商業捕鯨を再開できるようにする提案を行いましたが、オーストラリアなどの捕鯨に反対する国が「商業捕鯨につながるいかなる提案も認めない」などと強硬に反対した結果、提案は否決されました。
これを受けて、日本はIWCにとどまっていても商業捕鯨が認められる可能性はなくなったと判断し、去年12月、脱退を通告しました。
◇捕鯨をめぐる対立
捕鯨を支持する国と反対する国との間には、考え方に大きな違いがあります。
日本ではかつて捕鯨が盛んに行われ、特に戦後の食糧難の時期にはクジラの肉はタンパク源として重宝されるなど日本の捕鯨は1960年代に最盛期を迎えました。
しかし、シロナガスクジラなどの貴重なクジラが減少したとして、次第に国際的な批判が高まり、IWCで商業捕鯨の一時停止が決議されて、日本も商業捕鯨を中断しました。
その後も日本は、クジラは重要な食料資源で魚などと同様に科学的な根拠に基づいて捕獲すべきであり、クジラを食べるという食文化の多様性も尊重されるべきだとして、商業捕鯨の再開を求め続けてきました。
また、ノルウェーやアイスランドのように、IWCに加盟しながら商業捕鯨を行っている国もあるほか、IWCに加盟していないカナダやインドネシアも商業捕鯨を行っています。
これに対して、捕鯨に反対する国では、資源量の減少を問題とするだけでなく、欧米を中心にクジラは哺乳類で知能も高いとして、殺すこと自体への批判もあります。
特にオーストラリアは、商業捕鯨だけでなく、いわゆる科学的な捕鯨として認められてきた調査捕鯨もクジラの殺傷を伴うものとして、反対する強い姿勢を示しています。
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