2019.06.10 Monday
無給医 少なくとも2000人 国が初めて存在認める 公表へ
大学病院などで無給で診療にあたっている若手医師。「無給医」と呼ばれていますが、国は長年その存在を否定してきました。しかし、全国の大学病院を調査した結果、少なくともおよそ50の大学病院に2000人を超える無給医の存在が確認できたとして、近く明らかにする方針です。
無給医は、大学病院などで診療にあたっているにもかかわらず、研修中であることなどを理由に給料が支払われない若手の医師や歯科医師のことです。
1960年代には大学の医局の権力構造を象徴する問題として学生運動のきっかけにもなりましたが、国はその後、若手医師の処遇は改善されたとして、長年その存在を否定してきました。
平成24年に行われた調査でも「無給医は存在しない」としています。
しかし、ことし1月から文部科学省が全国108か所ある医学部と歯学部の付属病院を対象に調査したところ、無給医が今も存在することが確認できたということです。
この調査結果を踏まえ、文部科学省は近く無給医の存在を認めるとともに、その数が少なくとも全国およそ50の大学病院で、合わせて2000人を超すことを明らかにする方針です。
国がこうした無給医の実態を明らかにするのは今回が初めてです。
◇無給 ピラミッド構造で声上げづらく
医師を目指す学生は医学部で6年間学んだあと、国家試験を受けて医師免許を取得します。
「初期研修」と呼ばれる最初の2年間は月給30万円ほどが手当てされますが、そのあとも大学の医局に所属しながら、「大学院生」や「医局員」などの立場で数年間にわたり若手医師として診療などの経験を積むケースがほとんどです。
医局は教授を頂点とし、准教授、講師、助教と連なるピラミッドのような構造となっていて、最も下に位置する大学院生や医局員などは、医師として診療にあたっていても無給だったり、わずかな給与だったりすることがあるということです。
しかし、医局に所属する若手医師は、専門医や医学博士の資格などを取るためや、関連病院に出向する際の人事権などを握られているため、現状の制度に対して医局の上司らに疑問や不満の声を上げづらく、問題が顕在化しなかったと見られます。
◇「勤務は週一日」とうその契約書
首都圏の大学病院で働く30代の男性医師は、朝から深夜まで外来診療や手術などにあたっていますが、わずかな手当以外は給料をもらっていないといいます。
男性は医学博士になろうと大学院に進みましたが、実際は研究に充てる時間はほとんどなく、ほかの医師と同じくフルタイムで大学病院で診療にあたっています。
しかし給料はもらえず、健康保険や雇用保険などにも加入できません。
院生のため学費を支払う必要があり、週一日、外部の病院でアルバイトをして収入を得ています。
所属する大学は文部科学省による調査のあと、全くの無給状態から月に数万円程度が支払われるようになりましたが、実際は毎日働いているにもかかわらず、大学には、勤務は週一日だけ、とうその契約書を書かされたといいます。
男性は、「勉強中だからお金がもらえなくて当たり前ということがこれまでまかり通ってきました。しかし、実際、医師として行っていることは通常の大学病院の業務です。当たり前にやっていることを当たり前のように認めてほしいです」と話していました。
◇大学病院医師「氷山の一角では」
国が初めて無給医の存在を認めたことについて、都内の大学病院に勤める30代の医師は、「ようやく認められたかという気持ちです。これまで、業務命令を受けて医師として診療に従事しているのに、自分だけそれは『実習』だと言われて、無給で働く屈辱的な思いをしてきました」と話しました。
そのうえで、「私の大学では医師個人には調査しておらず、調査結果の2000人は氷山の一角ではないでしょうか。国の調査後も待遇改善の兆しはありません。この調査で終わりにせず、行政には適切に対応してほしいです」と訴えていました。
◇専門家「若い医師が希望持てるよう解決策を」
国が初めて無給医の存在を認めたことについて、医師の働き方に詳しく厚生労働省の「医師の働き方改革検討会」の委員も務めた特定社会保険労務士の福島通子さんは、「出るべくして出た結論だと思います。今まで手を付けられなかった医療という分野にさまざまな手が入り、医師は聖職ではなく、一人の労働者だという考え方が広まり始めたのではないか。昔からこうだから同じようなことを繰り返すという考え方はもう通らないと思います」と述べました。
そのうえで、「調査されて実態がある程度把握できた今を好機と捉えるべきです。これからの将来を背負う若い医師が将来に希望を持てるよう、国、医療機関、国民も含めて総力を挙げて解決策を考えていかなければならない」と指摘しました。
無給医は、大学病院などで診療にあたっているにもかかわらず、研修中であることなどを理由に給料が支払われない若手の医師や歯科医師のことです。
1960年代には大学の医局の権力構造を象徴する問題として学生運動のきっかけにもなりましたが、国はその後、若手医師の処遇は改善されたとして、長年その存在を否定してきました。
平成24年に行われた調査でも「無給医は存在しない」としています。
しかし、ことし1月から文部科学省が全国108か所ある医学部と歯学部の付属病院を対象に調査したところ、無給医が今も存在することが確認できたということです。
この調査結果を踏まえ、文部科学省は近く無給医の存在を認めるとともに、その数が少なくとも全国およそ50の大学病院で、合わせて2000人を超すことを明らかにする方針です。
国がこうした無給医の実態を明らかにするのは今回が初めてです。
◇無給 ピラミッド構造で声上げづらく
医師を目指す学生は医学部で6年間学んだあと、国家試験を受けて医師免許を取得します。
「初期研修」と呼ばれる最初の2年間は月給30万円ほどが手当てされますが、そのあとも大学の医局に所属しながら、「大学院生」や「医局員」などの立場で数年間にわたり若手医師として診療などの経験を積むケースがほとんどです。
医局は教授を頂点とし、准教授、講師、助教と連なるピラミッドのような構造となっていて、最も下に位置する大学院生や医局員などは、医師として診療にあたっていても無給だったり、わずかな給与だったりすることがあるということです。
しかし、医局に所属する若手医師は、専門医や医学博士の資格などを取るためや、関連病院に出向する際の人事権などを握られているため、現状の制度に対して医局の上司らに疑問や不満の声を上げづらく、問題が顕在化しなかったと見られます。
◇「勤務は週一日」とうその契約書
首都圏の大学病院で働く30代の男性医師は、朝から深夜まで外来診療や手術などにあたっていますが、わずかな手当以外は給料をもらっていないといいます。
男性は医学博士になろうと大学院に進みましたが、実際は研究に充てる時間はほとんどなく、ほかの医師と同じくフルタイムで大学病院で診療にあたっています。
しかし給料はもらえず、健康保険や雇用保険などにも加入できません。
院生のため学費を支払う必要があり、週一日、外部の病院でアルバイトをして収入を得ています。
所属する大学は文部科学省による調査のあと、全くの無給状態から月に数万円程度が支払われるようになりましたが、実際は毎日働いているにもかかわらず、大学には、勤務は週一日だけ、とうその契約書を書かされたといいます。
男性は、「勉強中だからお金がもらえなくて当たり前ということがこれまでまかり通ってきました。しかし、実際、医師として行っていることは通常の大学病院の業務です。当たり前にやっていることを当たり前のように認めてほしいです」と話していました。
◇大学病院医師「氷山の一角では」
国が初めて無給医の存在を認めたことについて、都内の大学病院に勤める30代の医師は、「ようやく認められたかという気持ちです。これまで、業務命令を受けて医師として診療に従事しているのに、自分だけそれは『実習』だと言われて、無給で働く屈辱的な思いをしてきました」と話しました。
そのうえで、「私の大学では医師個人には調査しておらず、調査結果の2000人は氷山の一角ではないでしょうか。国の調査後も待遇改善の兆しはありません。この調査で終わりにせず、行政には適切に対応してほしいです」と訴えていました。
◇専門家「若い医師が希望持てるよう解決策を」
国が初めて無給医の存在を認めたことについて、医師の働き方に詳しく厚生労働省の「医師の働き方改革検討会」の委員も務めた特定社会保険労務士の福島通子さんは、「出るべくして出た結論だと思います。今まで手を付けられなかった医療という分野にさまざまな手が入り、医師は聖職ではなく、一人の労働者だという考え方が広まり始めたのではないか。昔からこうだから同じようなことを繰り返すという考え方はもう通らないと思います」と述べました。
そのうえで、「調査されて実態がある程度把握できた今を好機と捉えるべきです。これからの将来を背負う若い医師が将来に希望を持てるよう、国、医療機関、国民も含めて総力を挙げて解決策を考えていかなければならない」と指摘しました。
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