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女性の平均賃金、男性の7割
◎女性の平均賃金、男性の7割 正規と非正規の「裂け目」
 (2019年03月03日 22:10 朝日新聞デジタル)

 2017年の賃金構造基本統計調査で、男性を100とした場合の女性の賃金は73.4にとどまった。格差は1976年以降で最も縮まったものの、依然として先進国では最低レベルだ。背景には、「夫が稼ぎ、妻は家事を担いつつ家計を補う」という古いモデルを前提にした制度や慣習が残り、女性が働き続けることが難しい現状がある。

 関西地方の女性(50)は、賃貸住宅で中学生の娘と暮らしている。会社員の夫とは別居中だ。

 週3日の清掃のパートで、月収は6万円ほど。夫から生活費を10万円受け取っているが、5万5千円の家賃、光熱費、食費、医療費などでほぼ底を突く。成人した息子は家を離れたものの完全に自立できておらず、その援助もしている。

 高校卒業後、正社員として複数の会社に勤めた。結婚を機に退職し、その後は、扶養家族の範囲で収まるようにパートで働いた。子育てや家計に問題が起きても、夫と話し合いができず、やがて怒鳴られるようになり、別居。家庭裁判所に離婚調停を求めたが、夫が出廷したりしなかったりで、打ち切られた。

 そのころから、精神科にかかるようになった。夫からの生活費がいつ途絶えるとも分からない。「自分の収入だけでは、その月さえも暮らせない。一時は娘を連れて死んでしまおうかと考えました」

 離婚が成立すれば、児童扶養手当などひとり親向けの支援も受けられるが、今は対象外だ。昨年にはリウマチも患った。通院や娘のサポートで仕事にも支障が出ており、職場に申し訳ない思いを抱えながら日々を過ごす。「自分が至らないからだとは思いながら、どうしたらよいのか、どこに助けを求めたらよいかも分からない」と途方に暮れる。

 3歳の娘と神奈川県で暮らす30代の女性は今、正社員をめざして求職している。大学を卒業後、教員などとして働いていた。結婚し、出産を機に退職したが、金銭感覚の違いなどから昨年末に離婚した。

 いまは非正規の派遣社員で、収入が少ない月は10万円あまり。祝日が多い月は働く日が減り、収入は減る。「正社員だったら、ゴールデンウィークの10連休が楽しみになるんですかね」。10連休は保育園も休みで、単発のアルバイトもできない。

 離婚後、養育費を受け取り続けられる母子家庭は全体の24%。経済観念に難がある前夫が、約束した月9万円を払い続ける保証はどこにもない。安定的に稼げる正社員の口を求めて20通以上の履歴書を送ったが、色よい返事はまだない。面接にこぎ着けても、ほぼ必ず聞かれるのは「残業はどのくらいできる?」。

 保育園の送り迎えの時間が決まっているシングルマザーにとって、残業は1カ月に10時間がやっと。夜間の突発トラブルの対応も難しい。「正社員なら20〜30時間は残業しないと」。転職エージェントの担当者の言葉が重い。

 就職面接のために仕事を休めば、それでまた給料が減る。派遣社員には交通費の支給もない。毎月5千円かかる定期券をみて思う。「自転車で40分かけて通えば、娘と外食できるかな」

 早稲田大の橋本健二教授の分析では、夫と離婚・死別した女性の場合、3年後までに7割以上が非正規労働者になる。離婚した女性については、結婚前は53.8%が正社員として働いていたが、この比率は離婚後3年までに17.1%に落ち込む。逆に、非正規の比率は73.2%まで高まる。正規と非正規(パート主婦を除く)では世帯収入に約1.6倍の賃金格差が出るという。

 橋本教授は、現代社会は経営者らで構成する「資本家階級」や「労働者階級」などに分けられるとするが、「労働者階級」の中で正規と非正規の間に「裂け目」が入っていると考える。世帯としては収入が安定するパート主婦や専門職らを除いた非正規の新しい階級「アンダークラス」が、労働者階級の下位に生まれていると指摘する。その規模は2012年段階で約930万人と推計され、就業人口の15%にも達する。

 アンダークラスの平均年収は186万円と低く、中でも、シングルマザーが多い59歳以下の女性では、個人収入は164万円、世帯収入は303万円にとどまるという。アンダークラスの女性は抑うつ傾向の強い人も多く、20代で50%、30代で36%、40代で29%と深刻だ。

 さらに、いわゆる「貧困の連鎖」でこの階級に流入する人は性別を問わずいるものの、女性の場合には中流の家庭で育ち、高学歴でも、結婚・出産で仕事をやめて主婦になり、その後の離死別で転落する新たなルートがみえてきたという。

 厚生労働省の出生動向基本調査(2015年)によると、結婚後も仕事を続ける女性は7割を超えたものの、続けたうちの約半数が初めの子の出産後に退職している。橋本教授は、「結婚前に正社員で働いていても、いったん離職すれば再び正規に戻るのは絶望的に難しい。長時間労働を是正し、社会で仕事をシェアし合うことで、正規労働者を増やしていくべきだ」と語る。

◇突然、打ち切りを伝えられ
 「ずっと契約を更新してもらえるように、家でも勉強しているんです」。会社帰り、資料を入れたかばんを指して、都内の会社に勤める女性(41)は言った。

 一昨年、4年以上勤めた運送会社から、突然、解雇を告げられた。非正規ながら長く勤められる予定で、信じられなかった。

 結婚前は、正社員として不動産会社などに勤めていた。結婚後、いったん仕事をやめたものの、子どもを産んで3カ月で再就職した。夫は介護職で、当時の月収は十数万円。自分の収入がないと家計が維持できなかった。

 運送会社では、在庫管理や経理を任され、正社員と同じように働いた。残業もあり、月収は20万円ほど。「支店社員」という立場で1年ごとの契約だったが、会社側からは「期限はない」という説明だった。

 ところが、2017年に突然、打ち切りを伝えられた。「何を言われているのか分からず、頭が真っ白になった」。家族を養っていること、40代を目前に同じ条件の仕事探しは難しいことを説明しても、「たかが事務でしょ」「女性だから、何とかなるでしょ」などと取り合ってもらえなかった。

 雇用の期限があることが分かっていれば、もっと早く別の仕事を探したのに……。家族の生活を考えて夜も眠れず、泣き明かした。ストレスから体調も崩し、「再就職は無理だ。人生終わった」と思い詰めた。

 女性は契約打ち切りの無効を求めて裁判を起こす傍ら、ハローワークに通い、正社員の仕事を探した。しかし、事務職ではほとんど募集がなく、昨年末から医療関係の会社で非正規で働き始めた。ただ、いつまた雇い止めになるかと考えると不安だ。「子どもの将来を考えると、収入が安定していないことが本当に申し訳ない」

◇古い性役割分業の意識
 「他の先進諸国が非正規雇用をごく限定的なものにしているのに対し、日本は拡大してきた。そして、その多くを女性が担っている」。立正大の高橋賢司・准教授(労働法)は、男女格差という観点から、日本の労働法制の貧しさを指摘する。

 非正規で働く人は2016年に2千万人を超え、全体の4割近くにまで増えた。全体の男女の賃金格差は徐々に縮まっているものの、経済協力開発機構(OECD)の42カ国で下から3番目だ。

 全体でみれば、非正規の人らは恒常的な労働力になっているが一人ひとりにはいつ解雇されるか分からない心配がつきまとう。正社員並みに働いても昇級や各種手当、スキルアップの機会がないことが多い。「誰もが安心して働くことができるためにも、男女の格差解消のためにも、無期雇用を原則にする法整備が必要だ」

 このほか、高橋准教授は、女性管理職・役員の比率を決めて登用する「クオータ制」の義務化▽社会全体の時間外労働や深夜労働の削減▽育休後、もとの職場に復帰できる権利の保障▽男性の育休取得――などで、「個を犠牲にする働き方の見直しを」と力を込める。

 古い性役割分業の意識も根強く残る。内閣府の2016年の調査では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」に「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた人が全体の4割に上った。

 京都府の男性(32)は思春期のころから、「強くてモテる男が優れている」という空気が苦手だった。

 大学院在学中にアルコール依存と躁鬱病を患い、今は公園の清掃と家庭教師で、月に約6万円を稼ぐ。「夫は外、妻は家」という意識は、男性の価値を経済力で測ることにつながっていると感じる。「女性が経済的に自立して生きられる社会になれば、自分のような男性も『男らしく』の重圧から解放されるのでは」と考えている。
| 政策 | 22:59 | comments(0) | trackbacks(0) |









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