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私語禁止「黙食」で給食苦痛
 「おいしいね」のひと言が言えない給食は味気ないですね。本来、食べる事は楽しみのはずです。

◎私語禁止の「黙食」で給食が苦痛に…教員も悩む「食育はそれでいいの?」
 (2019年03月01日 07:00 AERA dot)

 楽しいはずの給食の時間が苦痛だという子どもたちがいる。背景には時間優先で余裕がなく、「黙食」をさせざるを得ない学校の実情がある。

*  *  *

 給食を苦痛にするものに「食べる時間の短さ」がある。日本スポーツ振興センターの食生活実態調査(2010年度)によると、小中学生が給食を残す理由の3位は「時間が短い」。

 他業種を経て教職に就いた40代の女性が、小学校の現場でカルチャーショックを受けたのは、時間優先で楽しさが排除された給食風景だった。

 「もぐもぐタイムといって、20分のうち頭半分ほどは黙って食べないといけないんです。おしゃべりしたり、ふざけたりすると、給食の時間内に児童が食べ終えられないからです。全然楽しそうでなくて、食育に逆行しているような気が……」

 記者が今回の特集を組むきっかけとなったのも「黙食」だ。

 アエラ2018年12月10日号の学校特集「不自由が9割」で取り上げた学校では時間内に収めるため全員が前を向いて食べねばならず、私語は禁じられていた。

 食べることの好きな小学1年生の女児が、おいしいものを食べると「おいしいね」と言ってしまい、初めての食べものを見ると「これ何?」と聞いてしまう。そうすると先生にシーッと注意されてしまうため「給食の時間が怖い」と泣いたというエピソードがあった。

 これに対し、「子どもの主体性を尊重すべきだ」、「忍耐力よりも、会話を楽しみながら食事するスキルのほうがグローバル時代には大事では」など多くの反響があった。

 しかし、黙食は、やり方や程度に多少の違いはあれど、実施している学校や教員は少なくない。

 自身、もぐもぐタイムを一時期導入したことがあるという小学校教員の20代の女性は言う。

 「あと5分でも食べる時間が余分にあったら……と思いますが、カリキュラムがぎゅうぎゅうで調整の余地がありません」

 4時間目の授業が延びたり、配膳に手間取ったりすると、食べる時間は圧迫される。とりわけ小学校の低学年は手がかかる。時間内に食べさせるタイムマネジメントは教員にとっても負担で、30代の男性教員は自身が落ち着いて食べる暇はないと言う。

 「小学校の先生はみんな食べるのがすごい速いと思いますよ」

 タイムスケジュール優先の黙食によって、「おいしいね」のひと言が発せられないことに危機感をあらわにする人もいる。「さくらしんまち保育園」の園長・小嶋泰輔さん(43)だ。

 「そのひと言が食事を共にしている人との間に共感を生み、感謝の気持ちにもつながる。『おいしいね』が言えるかどうかは大きな問題です」

 同園では園児がランチタイム内の好きな時間に、好きな量、好きなおかずを選んで食べられる、セミバイキング形式のユニークな給食を実施している。そんなに自由にさせて大丈夫?

 取材に訪れると、ランチタイム開始を告げる軽快な音楽が流れ、おなかの空いた子からトレーを持ち並び始めた。

 「サラダにエビ入っている? ぼくのには入れないで」

 と交渉する男の子。保育士の籠山(かごやま)人志さん(32)は皿からエビを除きながら、「1個くらい食べてみる?」と声をかける。5人で食卓につくのがルール。

 好きな友だちを誘いおしゃべりしながら給食を楽しみ、食べ終えると園児は食器を所定の場所に片付ける。しかしそこに「残飯入れ」はない。食べ残す子がほとんどいないからだ。小嶋さんは言う。

 「食べたい量を自分で選んでいるので残さないんです。小さな子どもでも、自身が選択したことについては全うしようとする責任感が働きます」

 好き嫌いも放置しているわけではない。例えばトマトの嫌いな子の近くに、食べている子たちがいれば、保育士はトマトの会話を盛り上げながら食べ、おいしい雰囲気を作り出す。すると、つられて「ひと口食べてみようかな」となる。そこからスモールステップを踏む。友だちの影響力は大きく、集団で食べるからこそできる偏食解消法だ。

 「人が最もおいしく感じるのは空腹で楽しいとき。食べる時間を自由にしているのは、小学校と違い登園時間に2時間近くの開きがあるからです。一律の時間に押し込んで食べさせようとしても、おなかが空いていない子には苦痛でしかありません。楽しく食べる環境をいかに作るかがとても大事です」(小嶋さん)

 「おいしい」は幸福感のベースになり、豊かなコミュニケーションを生む。栄養や調理など、給食では「食事の質」については手厚く議論がされてきたが、「食べる時間のあり方」については後回しにされてきた。大事にすべきものは何か。丁寧に考えていくことが必要だろう。(編集部・石田かおる)

※AERA 2019年3月4日号より抜粋
| 福祉・医療と教育 | 23:29 | comments(0) | trackbacks(0) |









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