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ゲノム編集応用食品の流通ルール 国が検討案説明
 「ゲノム編集」と呼ばれる最新の遺伝子操作技術を使って生産された農産物などを、食品として流通させる際のルールとして国が検討している案を一般に説明する会が東京で開かれ、参加者からは質問や意見が相次ぎました。

 「ゲノム編集」は遺伝子を操作する最新の技術で、収穫量が増えるイネなど農林水産業の分野で応用に向けた研究が急速に進んでいて、国は食品として流通させる際のルールの案をまとめました。

 5日、東京 港区で説明会が開かれ、会場には一般の消費者や食品業者の関係者などおよそ200人が集まりました。

 説明会では、国の担当者が、現在まとめたルールの案として、新たな遺伝子を組み込んだものは毒性がないかなど安全性の審査を行う必要があるとする一方、現在開発が進むほとんどの農水産物で行われている、新たな遺伝子を組み込まず遺伝子の変異をおこさせる方法を応用した食品については、安全性の審査は必要とせず、義務ではないものの、事前に国に届け出を求めるとする方針を説明しました。

 このあと参加者からは、海外の事業者にはどのように届け出を求めるのかといった質問や、国への届け出の内容に問題がないか調べるプロセスが必要ではないかといった意見がだされ、担当者は、海外の企業には英語のホームページや大使館を通じて周知するほか、届け出の内容は国の専門家会議に報告され、実質的に検討されることになるなどと説明していました。

 国は大阪市でも今月8日に説明会を開くほか、今月24日まで国民に広く意見を募るパブリックコメントを行い、改めて専門家会議を開いてルールを決めることにしています。

◇ゲノム編集
 遺伝情報を高い精度で改変する技術で、DNA切断酵素である人工ヌクレアーゼを用い、ゲノム上で特定のDNA塩基配列を標的として遺伝子を壊したり、置き換えたりするもの。2010年以降、遺伝子治療や農畜産物の育種への応用を目指して研究が急速に進められている。

 人工ヌクレアーゼにより切断されたDNAは、切断部分に特定の塩基配列の末端を持ち、細胞が持つDNA修復機構により修復される。この時、切断された部分がそのままつなぎ直されれば何らの改変とならないが、機能している遺伝子領域を切断して機能を喪失させるノックアウトや、切断後に新たなDNA断片を挿入して機能を獲得させるノックインにより、ゲノムDNAを不可逆的に改変できる。

 ゲノム編集に用いる人工ヌクレアーゼは、第1世代から第3世代まで改良されている。第3世代人工ヌクレアーゼはCRISPR/Cas9(クリスパー・キャス9)と呼ばれ、標的とする約20塩基の配列に特異的に結合するガイドRNAを含むCRISPRと、特定の塩基配列でDNAを切断する制限酵素Cas9の二つのドメインからなるタンパク質複合体である。

 CRISPR/Cas9は、活性と利便性の点で第1世代(ZFN)や第2世代(TALENs)より優れるが、標的配列を認識する特異性の点では劣り、ガイドRNAと100%相補的でない配列でも切断して起こるオフターゲット効果が見られるため、特異性を高めることが課題となっている。

 CRISPR/cas9を開発した米国の化学・生物学者のジェニファー・ダウドナ、フランスの生物学者エマニュエル・シャルパンティエらは、2016年のガードナー国際賞に選ばれた。

 ゲノム編集の対象として、現在、様々な動物や植物細胞、ヒトを含む哺乳類の培養細胞で成功例が報告されている。米国や英国では、エイズや白血病の患者から細胞を取り出し、ゲノム編集技術により遺伝子を修復する臨床研究が実施されている。

 受精卵を対象としたゲノム編集については、遺伝性疾患の予防などが可能になると期待される一方、デザイナーベビーにつながるとの懸念や、生命の萌芽への操作に対する倫理的な問題もある。

 2015年12月、米英中を中心とする国際会議で、ヒトの細胞を使うゲノム編集は体細胞を基本とし、生殖細胞を使う場合は基礎研究に限り、子宮には戻さないなどの一定条件つきで容認する声明が出された。

 中国では、2015年4月と2016年4月に、それぞれ別の研究チームがヒトの受精卵の遺伝子をゲノム編集で改変したと発表。

 後者の研究は、子宮に戻しても育たない異常な受精卵を使用し、遺伝子を狙い通りに改変できるかどうかを評価する基礎的研究目的で実施したというが、安全性や倫理面の議論が尽くされていない中でヒト受精卵を使ったゲノム編集を実施したことへの国際的な批判がある。

 ドイツ、フランスは、ゲノム編集の臨床利用を法律で禁止する。日本では、2016年2月、日本学術会議がゲノム編集を使った国内研究のルール作りを検討する分科会を置くことを決めたほか、内閣府の生命倫理専門調査会は同4月、ゲノム編集のヒト受精卵への応用を基礎的研究に限って容認するとの報告書をまとめた。報告書では、臨床利用については容認していないが、法的拘束力はない。

 (葛西奈津子 フリーランスライター/2016年)
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