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予想に反し品切れ カレー賢人
 確かにスプーンの前方に一番深いところを持ってくると、手首の角度を変えることなく口の中に運べて口抜けもよくなります。また、切り分け機能を付加したものがあれば便利です。一度使ってみたいと思いました。

◎1250円の「カレー専用スプーン」は、どうやって開発したのか  
 ( 2018年10月19日 07:52 ITmedia ビジネスオンライン)

 カレーライスを食べる時、スプーンにこだわる人は多くないだろう。出されたものを使うか、無意識に選んだものを使っているはずである。しかし世の中には、カレー専用につくられたスプーンがある。その中でも現在、注目を集めているのが、「カレー賢人」だ。

 「カレー賢人」は、日本で最もカトラリー(金属洋食器)づくりが盛んな新潟県燕市に本社を置く山崎金属工業が開発・販売しているもの。現在、左右対称のティアドロップ型「キャリ」と、左右非対称の「サクー」の2つがある。

 1本1250円(税抜)とやや高価だが、2017年7月の発売と同時に話題となり、何度か品切れを起こしたほど。これまでに2つ合わせて約2万本売れているが、誕生の裏には、カレー店の店主やカレーマニアの声を集めた開発担当者の地道な努力があった。

◇カレー激戦区・神田神保町でヒアリングを重ねる
 ノーベル賞晩さん会に採用されるほど高品質・高価格なカトラリーが主力の山崎金属工業で、比較的手が届きやすい価格帯の「カレー賢人」が企画されたのは2015年秋のこと。家庭で一番身近なカトラリーであるスプーンが最も印象深く見える料理は、国民食であるカレーであったことから発案された。

 開発に当たり同社は、ユーザーの声を聞くことにした。その理由を、開発を担当した国内営業部の中村雅行氏は、次のように話す。

 「洋食器業界の主要な顧客はホテルやレストランですが、問屋経由で販売されるため、お客さまの声が届きにくいところがあります。何をほしがっているのか、どんな悩みを持っているのか、といったことが分かりにくいのです」

 中村氏は早速、カレー店の店主から話を聞くことにした。月に数回、出張で東京に来た時を利用して、都内でカレー激戦区として有名な神田神保町のカレー専門店を飛び込みで訪問。欧風カレーを提供する店を重点的に回り、店主からスプーンに対する不満や要望などをヒアリングした。

 2015年10月から12月にかけて、上京するたび1日4〜5軒のカレー店を訪問。話を聞くだけでなくカレーを食べていくこともしばしば。足だけでなく胃袋も使い、体当たりでヒアリングした。

 カレー店へのヒアリングで分かったことに、皿とのバランスの悪さがあった。

 皿は割れたり欠けたりすることがあるので買い換えられるが、スプーンは簡単に壊れないため、オープン当初にそろえたものを使い続けることが珍しくない。最近のカレーは大きな皿に盛りつけられる傾向にあることから、新しい大きな皿と古いスプーンを組み合わせると、スプーンが皿の大きさの割に小さくバランスよくないというのである。

 それに、最近のカレーは具材が大き目になる傾向があるという。今までなら深さがなく薄いスプーンでも大丈夫だったが、そのようなスプーンだと具材が切りづらくすくいにくくなっている。

◇カレーマニアが無意識に感じていたスプーンに対するストレス
 神田神保町界隈のカレー店と関係を築いていく中で、中村氏は「神田カレーグランプリ」というイベントの存在を知る。2011年から始まったこのイベントは、来場者の投票によって神田界隈のカレー店の中からナンバー1の店を選出するもの。興味を持った中村氏は2015年12月、「神田カレーグランプリ」の実行委員会を訪ねた。

 実行委員会を訪ねたのは、カレー店を紹介してもらうためだった。だが実行委員会は、中村氏がカレー専用スプーン開発のために情報収集していることを知ると、中村氏に対し「カレー好きの人たちから話を聞いたほうがいい」とアドバイス。中村氏もアドバイスを受け、「神田カレーグランプリ」で実施しているスタンプラリーで全店制覇したカレーマニアに話を聞くことにした。

 2016年1月、中村氏はカレーマニアの集まりに参加し、200人近く集まったカレーマニアにヒアリングする機会を得た。

 カレーマニアをヒアリングして分かったことは、スプーンについては「気にしていない」こと。悩みや気になっていることを尋ねても、返答に困る様子だった。

 だが、そんな様子は最初だけ。尋ねたことがきっかけで、無意識に感じていたスプーンに対するストレスが徐々に浮き彫りになってきた。

 ストレスに感じていたことで多かったのが、最後まできれいに食べたいのにできないこと。「皿に残ったご飯を一粒残らず食べたいのに、なかなかできない」といった声が聞かれた。また、「具材が大きくて切りづらい」といった指摘も受けた。

◇ベテラン職人でも戸惑う「サクー」の製造
 集まった悩みや不満の声を基に、「カレー賢人」の具体的な形状や大きさが検討されることになった。6種類ほど試作をつくり、カレー店の店主やカレーマニアが検証。その結果、現在の「キャリ」と「サクー」に決まった。

 従来同様の形状で大きくした「キャリ」は、一見すると目立った特長がないように見えるが、一般的なスプーンと違い、皿の手前側に一番深いところがある。一般的なスプーンは、一番深いところがハンドルの付け根に近い後方にあるが、これだとカレーライスをすくってから口の中に運ぶ時に手首を返さなければならなくなる上に、口から抜いた時に米粒が残ってしまうことがある。

 しかし、前方に一番深いところを持ってくると、手首の角度を変えることなく口の中に運べ、口抜けもよくなることで米粒が残ることがなくなる。深さについては、カレーが最もおいしく食べられるとされるライス、ルウ、具材の黄金比を実現するものだという。

 一方、右肩上がりの形状をした左右非対称の「サクー」は、「キャリ」に切り分け機能を付加したもの。先端がへら状になっており、具材にすっと入り込み切りやすくなっている。また、一番深いところが中心よりやや左側にあり、置くと右から左に向かって下がっていることが分かる。ヒアリング結果に同社が持っている食べやすくするノウハウをプラスした結果、このような形になった。

 つくるのが難しそうな形だが、取締役工場長の山崎修司氏は、「磨きにくいところなどはあるが、技術的には決して難しくない」と話す。だが、これまでつくったことのない形状のため、今までの常識が当てはまらず、何を基準にしていいのかが分からないままつくらざるを得なかった。「何をもって美しい形ができたと判断すればいいのか、分からないままつくらなければならなかった」(山崎氏)ため、ベテランの職人ですら戸惑うほどだった。

切り分け機能を付加したもの予想に反し売れ品切れを起こす
 現在は一部の小売店でも取り扱われているが、「カレー賢人」は最初、同社のオンラインショップでのみ販売した。その理由は、コストをかけてつくったからであった。

 100円ショップで売っているような安いスプーンは6〜8工程程度でつくっているのに対し、「カレー賢人」は30工程近くかけて製造している。「コストをかけてつくったからといって、お客さまの手に届きにくい価格にはできません。税抜1250円でも『高い』と言われますが、このあたりの価格で売るために、問屋を介さず自分たちで売ることにしました」と山崎氏は明かす。

 発売するとさまざまなメディアが注目。SNSを中心に話題が拡散していったこと、「それほど売れるとは思わなかったので、生産量も控え目にした」(中村氏)ことから、品切れを起こすことになった。

 販売に当たり同社が重視したのは口コミだった。その理由を中村氏は「カレーマニアはうんちくを語りたがるところがあるため」と言う。ヒアリングに協力してくれたカレー店の店主やカレーマニアをはじめ、全国のカレー好きの目に留まり、「カレー賢人」の口コミが拡散していった。

 話題になったことで、法人のギフト需要を開拓することにも成功する。洋食器をプレゼントする場合、ナイフ、フォーク、スプーンなどセットにしたものを渡すのが一般的だが、「カレー賢人」だと1本単位で渡すことが可能。1本だけ入れられる専用ケースをつくり、ギフト需要に対応している。

 ユーザーからは「使い勝手がいい」「取りやすい」「口抜けがいい」と評されることが多く、マイスプーンとして常に持ち歩いている人もいるほど。また、「キャリ」ではライス、ルウ、具材の黄金比が実現することから、子どもから「スプーンの中にミニカレーができた」という声が寄せられたこともあった。

 注文数では個人からのものが多い「カレー賢人」だが、今後はカレー専門店など業務用途も積極的に開拓したい考え。さらなる人気は、業務用途での拡販がカギを握っている。

 (大澤裕司)
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