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西野ジャパンの「GK交替論」
 ミスが目立ちパッシングの的となっているGK川島ですが、交替にもリスクが伴うとの事です。

◎ネット批判集中のGK川島はポーランド戦で先発交替すべきなのか?
 (2018年06月27日 05:11 THE PAGE)

 開幕前の芳しくない下馬評を鮮やかに覆し、ワールドカップ・ロシア大会で快進撃を続けている西野ジャパンのなかで、ゴールキーパーの川島永嗣(FCメス)だけが批判の嵐にさらされている。

 FW大迫勇也(ベルダー・ブレーメン)の劇的なゴールで、コロンビア代表を2ー1で撃破した19日のグループリーグ初戦では、直接FKをジャンプした壁の下に通される形から一時同点とされた。

 これは壁を作った味方選手とのコミュニケーション不足も一因だった。しかし、セネガル代表との第2戦の前半11分に許した先制点は、川島の完全なるボーンヘッドだった。

 日本から見てペナルティーエリア内の右サイドから、DFユスフ・サバリ(ボルドー)が放ったシュートは、低い弾道で川島のほぼ正面に飛んできた。セオリー通りならばキャッチにいくべき状況で、目の前にFWサディオ・マネ(リヴァプール)がいたこともあり、川島はパンチングを選択する。

 しかし、慎重に処理したい思いが強かったのか。ひざまずいた体勢から両手を伸ばし、なおかつシュートそのものがやや沈む軌道を描いたために、ボールを地面に叩きつけてしまう。これが詰めてきたマネの左ひざのあたりにハーフバウンドで当たり、無情にもゴールインしてしまった。

 川島は試合後、「自分のミスだ」と認めていたが、ゴール内に転がっているボールを確認すると、振り向きざまに表情をゆがめながら何やら叫び声を発し、次の瞬間、ピッチに突っ伏してしまった。

 思いもよらない展開からセネガルへ献上した先制点に、生中継していたNHK BS1で副音声を務めていた、川島がレギュラーに抜擢された2010年6月当時の日本代表監督、岡田武史氏は「本人はよくわかっていると思うけど、川島はキャッチするべきだった」と思わず苦言を呈した。

 めったに見られないミスだったからか。国際サッカー連盟(FIFA)の公式サイトでも、逆サイドからのクロスを中途半端にクリアし、サバリへパスする形となったMF原口元気(ハノーファー)のミスと合わせて、速報で「コメディー・オブ・エラーズ」と報じられてしまった。

 西野ジャパンの初陣だった先月30日のガーナ代表とのワールドカップ壮行試合から、川島は中途半端なプレーが目についた。ワールドカップ本大会に突入しても改善されない状況を受けて、チーム最年長の35歳へ向けられる批判は、ネット上でもさらにヒートアップしている。

 28日のポーランド代表との最終戦で、引き分け以上ならば2大会ぶり3度目となる日本のグループリーグ突破が決まる。ネット上では守護神を東口順昭(ガンバ大阪)か、2年前のリオデジャネイロ五輪にも出場したホープの中村航輔(柏レイソル)に代えるべきだ、という声も少なくない。

 しかし、結論から先に言えば、川島を起用し続けるよりも、代えたほうのリスクが高いと言わざるを得ない。もし代えるのならばセネガル戦がベストにして、最後のタイミングだった。そこで川島を送り出したということは、3人のなかで依然として川島が一番信頼を得ている証となる。

 フィールドプレーヤー、特に最終ラインとの間で築かれたあうんのコミュニケーションや信頼関係を抜きにして、ゴールキーパーの仕事はまず成り立たない。その意味でも日本代表史上で初めて、3大会連続でワールドカップのピッチに立ってきた川島の経験値の高さ、それをパフォーマンスに反映させる力はずば抜けている。

 国際Aマッチ出場数を比べても、川島の「86」に対して、ともに初めてのワールドカップとなる32歳の東口が「5」、23歳の中村が「4」となっている。しかも、東口と中村の直近の試合は、12日のパラグアイ代表とのテストマッチの前後半の45分間ずつを交代で守ったものだ。

 加えて、もし東口か中村を起用した場合、ワールドカップのデビュー戦が日本の決勝トーナメント進出がかかる大一番となる。ポーランドだけでなく未知のプレッシャーとも戦わなければならないはずだし、そうなれば本来もっている実力を発揮することも難しくなるだろう。

 川島交替論をW杯の前哨戦の段階から唱えている元日本代表FWの城彰二氏でさえも「川島の不安定さは日本代表のウイークポイント。本来ならば交替すべきだが、東口、中村の経験値を考えると、場数を踏んでいる川島の経験に頼らざるを得ないのが現状かもしれない」とも言う。

 セネガル戦の前半39分には、縦パスから快足FWエムバイエ・ニアン(トリノ)に最終ラインの裏へ抜け出された。MF乾貴士(レアル・ベティス)のゴールで同点に追いついてから5分後。再び勝ち越されかねない絶体絶命のピンチで、川島は冷静な反応を見せている。

 前方へ数歩ステップしてシュートコースを狭めたうえで、両手を広げて腰を落とす。そこからニアンを必死に追走してくるDF吉田麻也(サウサンプトン)との共同作業に入り、吉田のプレッシャーを受けたことで、万全な体勢から放てなかったシュートを両手で完璧にセーブした。
 
 先制を許した瞬間は、絶望感に支配されたはずだ。それでもすぐに己を奮い立たせ、折れかけた心を立て直し、セネガルと再び対峙した。試合後のインタビューで心なしか目を赤く腫らしていたことからも、その後の川島が重い十字架を背負いながらプレーしていたことがわかる。

 突っ伏した直後に近寄り、檄を飛ばしてくれたキャプテンのMF長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)の存在も川島を勇気づけた。試合後には東口と中村が川島のもとへ駆け寄り、笑顔で話しかけながら手にした勝ち点1の重みを分かちあってもいた。

 ゴールが決まった直後にベンチ前で狂喜乱舞している光景が物語るように、開幕してからの日本はチーム全員が心をひとつにして戦っている。チーム間の強い絆が川島を支えていると言える。

 ただ、もし川島のパフォーマンスの礎となる自信が揺らいでいるようだと、このまま川島を起用することへのリスクはある。

 川島をこのまま起用するか、交替させるか。その決断ポイントは、首脳陣とのコミュニケーションが密に取れているかどうかだろう。特にGKコーチはアギーレジャパン時代から務める浜野征哉氏に加えて、西野ジャパンの発足に伴い、アトランタ五輪代表だった下田崇氏も入閣した。

 西野監督、手倉森誠コーチ、U−21日本代表監督を兼任する森保一コーチを含めて、批判が集中している川島のメンタルを把握できているかどうか。最後尾からチームへ安心感を与えるためにも、ゴールキーパーには威風堂々とした存在であることが求められることは言うまでもない。

 (文責・藤江直人/スポーツライター)
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