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世紀の会談 失敗だったのか
 中身が無い等と批判する専門家もいますが、初めの大きな第一歩と捉えるべきで、会談は失敗であったとみるべきではないと思います。

◎完全な非核化へ具体策なし「世紀の会談」は失敗だったのか?
 (6月13日 THE PAGE)

 史上初めてアメリカと北朝鮮の指導者が対面した「世紀の会談」。6月12日、両国の旗の前でがっちり握手した両首脳は、最初こそ固さが見られたものの、次第に打ち解けた雰囲気を演出。二人そろって主に4項目からなる共同声明に署名しました。「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄」(CVID)やいわゆる「体制保証」などが焦点となった会談の成果をどう評価するか。元外交官で日朝国交正常化交渉の日本政府代表も務めた美根慶樹氏に寄稿してもらいました。

◇アジアの冷戦
 アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との会談は、最終段階まで世界中の人をハラハラさせましたが、予定通り6月12日、シンガポールで開催されました。

 今回の会談の最大の注目点は、北朝鮮の「完全な非核化」でした。両首脳の共同声明はその具体的な内容に踏み込みませんでしたが、会談は失敗であったとみるべきではありません。米朝両国の首脳が初めて会談し、今後、米朝間で新しい関係を築いていくことと、朝鮮半島で永続的、かつ安定した平和の体制を構築していくために米朝両国が協力していくことなど重要なことが合意されたからです。

 この合意により、1950年以来の南北朝鮮、及びそれぞれの背後にある自由主義諸国と共産主義勢力の激しい対立は解消され、「冷戦」は終わることになります。そして永続的な平和を実現する道が開かれました。今後、両国は非核化という最終目標に向かってこの道を歩んでいくことになります。

 さらに、トランプ・金会談へ至る過程で朝鮮半島をめぐる緊張が緩和されたことも見逃せません。昨年までの異常な危険状態はすでに去っていますが、今後、米朝両国がこの道を進むにつれ、さらなる緊張緩和につながることが期待されます。

◇非核化の意思
 最大の懸案である「完全な非核化」の具体的詰めは今後の協議に委ねられましたが、これはやむを得ないことでした。金委員長の非核化に関する意思が動揺したとは思いません。非核化は複雑なプロセスであり、多くの問題を一つひとつ解決しなければならず、それには時間がかかるからです。主要な問題としては、核兵器廃棄の期限を明確にすることと効果的な検証の仕組みを作ることが挙げられます。

 核兵器廃棄の期限を明確にするのは、廃棄にはどうしても一定の時間が必要だからです。しかし、期限は遠くなればなるほど合意内容がぼやけてくるので、できるだけ近い時点に期限を設定しなければなりません。具体的にいつを期限とするかは今後の交渉次第です。期限を設定しない合意などは論外でしょう。

 期限を設定しないと、1994年の「米朝枠組み合意」や2005年の「6者協議」での共同声明のように失敗に終わる危険があります。

 また、北朝鮮は段階的な廃棄を主張するかもしれませんが、設定した期限を守ることが重要であり、その範囲内であればどのように処理するかは北朝鮮の問題かもしれません。

 もう一つの効果的な検証システムを構築するのはきわめて技術的、専門的なことなので、ある意味もっと難しいですが、重要なのは、「いつでも、どこでも」査察ができるようにすることです。「軍事施設」を理由に査察を拒否することや、隠ぺいの危険があるからです。

 さらに、北朝鮮の核不拡散条約(NPT)への復帰も必要です。これが実現すると、北朝鮮は査察を受けることが法的な義務となります。

◇体制保証
 一方、米国が北朝鮮に与えるのは「国家承認」です。朝鮮戦争の休戦協定を「平和条約」に転換することとか、「不可侵協定」、「攻撃しないとの保証」などで表現されることもあります。

 一部には、「体制保証」という表現を使う傾向がみられますが、「保証」は与える側が責任を持つことであり、「北朝鮮の体制」については、金一家体制であれ、共産主義体制であれ、あるいはその他の体制であれ、米国が「保証」することはあり得ません。

 米国はこの問題について「体制保証」に相当する言葉を使っていません。1994年の枠組み合意や2005年9月の6者協議共同声明が用いたのは、「米国が北朝鮮を攻撃しない」ということでした。今回の合意ではsecurity guaranteeであり、これは「安全の保証」と訳すべきでしょう。なお、トランプ大統領は「安全PROTECTION」と表現したこともあります。

 トランプ・金会談では、朝鮮戦争の終結宣言を行うとの観測が流れましたが、これはありませんでした。これだけを特に取り出すべきではなく、平和条約締結の中で処理されるべきだと考えられたのだと思われます。

◇中国の影
 中国については、金委員長が米朝会談の前に2回訪中し、習近平主席と会談しました。中国の影響力の大きさをあらためて示す一事でした。

 中国は、そもそも朝鮮戦争の時から朝鮮半島の安全に深くか関わっており、米国との交渉経験は豊富です。初めて米国の大統領と会談する金委員長にさまざまなアドバイスを与えたものと推測されます。ただ、今回の会談では第三者としての立場であり、金委員長一行のシンガポールへの渡航のため中国の航空機を提供しましたが、基本的には側面から協力する姿勢でした。

 平和条約が締結されることになれば、中国は南北朝鮮及び米国と並んで当事国となります。先の南北首脳会談の板門店宣言では、「南北米3者、または南北米中4者」と記されるなど、中国が不可欠ではないという意味にも解される言及がありましたが、中国は当事国であり、不可欠です。

◇拉致問題
 日本の拉致問題については、トランプ大統領は今次会談で金委員長に提起しましたが、結論は得られなかったようです。これも今後の協議の中でさらに話し合われることになりました。

 米朝首脳会談に先立つ7日、安倍首相はトランプ大統領との会談後の記者会見で「拉致問題を早期に解決するため、私は北朝鮮と直接向き合い、話し合いたい。あらゆる手段を尽くしていく決意だ」と発言しました。いままで「圧力」一辺倒であったが、今般このような姿勢を打ち出したことは評価できます。

 今後、日本政府は安倍首相の発言通り、北朝鮮と話し合い、あらゆる手段を講じて解決を図るべきです。北朝鮮は、拉致問題は解決済みと主張しており、ストックホルムで合意された特別調査はすでに完了したとの立場です。一方、日本政府は、調査が続けられるものとの認識です。この矛盾を解消することがまず必要です。

※美根慶樹(みね・よしき)
 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスタン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹
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